【どこよりも分かりやすい!】都城高専に進学したら将来なにになれるのか【建築学科編】
令和5~7年度の公開進路資料から、設計・構造・設備・施工・維持管理の学びと将来の仕事まで分かりやすく解説
この記事の目次
建築学科と聞くと、家の間取りや外観を考え、図面を描く学科を想像する人が多いと思います。しかし、建物は見た目だけでは完成しません。
地震や台風に耐えられる構造、暑さ・寒さ・明るさ・音・空気を整える技術、電気・空調・給排水などの設備、材料の性質、工事の順序と安全、建築基準法、費用、完成後の点検や改修まで考える必要があります。
また、建設現場で働く技術者も、自分一人で壁を作ったり、鉄骨を組み立てたりするわけではありません。設計図を読み、多くの専門会社や職人と打ち合わせをし、品質・安全・工程・費用を管理しながら、図面を実際の建物へ変えていきます。
都城高専の建築学科は、建築を「計画・意匠」「構造・防災」「環境・設備」「材料・施工」の四つの柱から学ぶ学科です。1年生から設計演習に取り組み、CAD、建築製図、構造力学、建築材料、測量、建築環境、建築設備、建築法規などを学びます。5年生では研究室に所属し、卒業研究や卒業設計に取り組みます。
この記事では、都城高専が公開している建築学科・専攻科の情報、令和5~7年度の就職・進学先、学校全体の進路統計、建築士試験の公式情報を基に、建築学科で学ぶ内容と卒業後の仕事を、中学生と保護者にも分かるように具体的に紹介します。
1.結論 - 建築学科からは、「建物を考え、確かめ、建て、長く使う」技術者を目指せる
都城高専の建築学科を卒業すると、たとえば次のような仕事に就く可能性があります。
- 依頼者の希望、敷地、予算、法律を整理し、住宅・学校・店舗・オフィスなどを設計する
- CADやBIMを使って、平面図、断面図、立面図、詳しい施工図、三次元モデルを作る
- 地震、風、積雪、建物自体の重さに耐えられる柱・梁・壁・基礎を計算する
- 工事現場で、図面どおりに安全かつ正確に建てられているかを管理する
- 建物の電気、空調、換気、給排水、衛生、防災設備を設計・施工する
- 住宅の設計や施工管理を行い、施主と打ち合わせながら暮らしを形にする
- 店舗、ホテル、オフィス、展示会などの内装・空間を計画し、完成まで管理する
- 古くなった建物を調査し、耐震改修、大規模修繕、用途変更、設備更新を行う
- オフィスビルや商業施設の設備を点検し、故障を防ぎ、快適な環境を保つ
- 木材、コンクリート、外壁、窓、住宅設備などの性能を試験し、製品を改善する
- 自治体や国の機関で、公共施設の計画、工事の発注・監督、建築行政に関わる
- まちの空き家、駅前、公共空間、防災、景観などを調査し、地域の将来を計画する
人がどのように使うかを考え、安全性と快適性を確かめ、材料と工法を選び、多くの人と協力して建て、完成後も長く使えるようにする学科です。
一つの建物にも、異なる専門の技術者が関わる
教室の広さ、廊下や階段の位置、生徒の動き、採光、避難経路、地域への開放方法などを考えます。敷地条件や建築基準法を確認し、建物の形と配置を決め、図面や模型で提案します。これが計画・意匠に近い仕事です。
柱、梁、床、壁、基礎にどのような力がかかるかを計算します。地震や強風で建物がどのように揺れるか、鉄筋コンクリート・鉄骨・木材のどれを、どの太さ・形で使うかを検討します。これが構造・防災に近い仕事です。
夏の暑さ、冬の寒さ、日差し、照明、音、換気、空調、給排水、電気、防災設備を計画します。省エネルギーと快適性を両立させるため、窓や断熱材、機器の大きさ、空気や水の流れまで考えます。これが環境・設備に近い仕事です。
資材と人員を手配し、工事の順序を組み、図面を確認し、品質・安全・工程・費用を管理します。雨や設計変更、資材の遅れなどがあれば、関係者と調整して計画を立て直します。これが施工管理に近い仕事です。
建物が完成した後も仕事は続きます。設備の点検、外壁や防水の修繕、耐震診断、空調更新、用途変更、解体や建て替えなど、建物を長く安全に使うための技術者が必要です。
本科を卒業して企業や官公庁で働くことも、都城高専の建築学専攻や大学へ進み、設計・構造・環境・材料などをさらに深く学ぶこともできます。
2.都城高専の本科・専攻科・大学編入の仕組み
都城高専には、中学校卒業後に入学する本科と、本科卒業後にさらに学ぶ専攻科があります。
本科は5年間です。本科を卒業すると「準学士」の称号が与えられ、就職、都城高専専攻科への進学、大学への編入などから進路を選びます。大学へ進む場合は、主に大学3年次へ編入する仕組みです。
ルート1 建築学科本科を卒業して就職
中学校 → 建築学科5年間 → 企業・官公庁へ
20歳前後から、建設、住宅、設備、内装、維持管理、建材、公務などの分野で技術者として働き始めます。
ルート2 専攻科へ進んでから就職
中学校 → 本科5年間 → 建築学専攻2年間 → 就職
計画・意匠、環境、構造、材料などをさらに深く学び、研究や高度な設計演習に取り組んでから就職します。
ルート3 大学へ編入
中学校 → 本科5年間 → 大学の主に3年次へ編入
大学の建築学科や関連分野で学び、卒業後に就職または大学院進学を選びます。
ルート4 専攻科から大学院へ進学
中学校 → 本科5年間 → 専攻科2年間 → 大学院
建築計画、構造、環境、材料、都市・地域などの研究をさらに深めたい人が選ぶことのあるルートです。
建築学専攻とは?
都城高専の専攻科には、建築学専攻があります。入学定員は4人、修業年限は2年間です。
建築学専攻は、本科で身につけた技術をさらに深め、建築の特定分野で自ら問題を見つけて解決し、建築文化の発展や豊かな都市空間の創造に貢献できる技術者を育てることを目的としています。
住宅や公共施設を設計するための基本、力の計算、材料、室内環境、設備、施工、法規を幅広く学び、卒業研究・卒業設計で一つのテーマをまとめる。
建築計画・意匠・環境、または構造・材料などの専門をさらに深め、実験・調査・解析・設計を自分で組み立てる。研究成果を学会などで発表し、他者からの質問に答える経験も積む。
所定の単位を修得し、大学改革支援・学位授与機構の審査で認められると、学士(工学)の学位を取得でき、大学院へ進学できます。
3.建築学科では何を学ぶのか
建築学は、数学や物理を使う工学である一方、人の暮らし、歴史、文化、芸術、法律、経済とも関わる総合的な分野です。都城高専では、計画・意匠、構造・防災、環境・設備、材料・施工を柱に、1年生から5年間かけて専門性を高めます。
計画・意匠 - 人の行動と暮らしから、建物や空間を考える
建築の設計は、外観を自由に描くことから始まるわけではありません。まず、誰が、いつ、何のために使うのかを考えます。
- 家族構成や生活の流れに合う住宅の間取りになっているか
- 学校や病院で、多くの人が迷わず安全に移動できるか
- 車いすやベビーカーでも利用しやすいか
- 敷地の日当たり、道路、周辺の建物、景観をどう生かすか
- 火災や災害時に、短時間で安全に避難できるか
- 建築基準法や用途地域などの条件を満たしているか
- 予算の範囲で、必要な広さと性能を実現できるか
建築計画、居住空間計画、建築史、都市計画などを学び、設計演習では図面、模型、文章、プレゼンテーションを使って、自分の提案を説明します。
住宅・学校・病院・店舗・オフィスなどの建築設計、内装設計、まちづくり、公共施設計画、改修設計、施主への提案などにつながります。
構造・防災 - 建物にかかる力を計算し、命を守る
建物には、自分自身の重さ、人や家具の重さ、風、地震、積雪などの力がかかります。柱や梁を太くすれば安全性は高まりやすくなりますが、材料と費用が増え、室内空間も狭くなります。
そこで構造力学や材料力学を使い、どこに、どの向きの力が、どのくらいかかるかを計算します。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の仕組みを学び、材料の強さや変形も確かめます。
- 柱、梁、床、壁、基礎へ力がどのように伝わるか
- 地震や風で、建物がどの程度揺れ、変形するか
- 木材、鋼材、コンクリートの性質をどう使い分けるか
- 接合部が壊れず、建物全体で力を受けられるか
- 既存建物に十分な耐震性があるか
- 火災、水害、台風、火山灰など地域の災害へどう備えるか
構造設計、耐震診断、構造実験、建材評価、施工管理、災害調査、技術開発などにつながります。
環境・設備 - 光、熱、空気、音、水、電気を整える
外から見て立派な建物でも、夏に暑すぎる、冬に寒い、室内が暗い、音が響く、換気が不足する、空調の電気代が高すぎるようでは、よい建物とはいえません。
建築環境工学では、日射、採光、照明、温度、湿度、断熱、換気、音響などを学びます。建築設備では、空調、換気、給排水、衛生、電気、消防設備など、建物の内部を支える仕組みを学びます。
- 窓の大きさや向きで、明るさと室温はどう変わるか
- 断熱材や日よけによって、冷暖房の負担をどこまで減らせるか
- 室内の二酸化炭素や化学物質を減らすため、どれだけ換気するか
- 部屋の用途に合う空調機や照明をどう選ぶか
- 給水・排水・電気・通信・防災の配管や配線をどこへ通すか
- 快適性と省エネルギーをどう両立するか
環境設計、設備設計、設備施工管理、ビル管理、省エネルギー改修、空調・換気技術の開発などにつながります。
材料・施工 - 図面を、安全で確かな建物へ変える
建物には、コンクリート、鉄筋、鉄骨、木材、ガラス、外壁材、断熱材、防水材、仕上げ材など、多くの材料が使われます。材料ごとに、強さ、重さ、熱や水への耐性、劣化の仕方、費用が異なります。
建築生産・施工では、どのような順番で工事を進め、どの会社がどの作業を担当し、いつ材料を搬入するかを考えます。工事中の安全、完成後の品質、工期、費用を同時に管理します。
- 設計図から必要な材料の量と工事費を見積もる
- 基礎、躯体、外装、設備、内装をどの順序で施工するか
- コンクリートの強度や鉄筋の位置が基準を満たしているか
- 高所作業、重機、資材搬入などの事故をどう防ぐか
- 工期に遅れが出たとき、どのように工程を組み直すか
- 図面だけでは決め切れない細部を、関係者とどう調整するか
図面、材料、法律、品質、安全、工程、費用、人間関係を総合し、数十社・数百人が関わるものづくりを前へ進める技術職です。
CAD・BIM・製図 - 頭の中の建物を、他の人が作れる情報にする
建築の図面には、平面図、立面図、断面図、配置図、詳細図、構造図、設備図などがあります。形を描くだけでなく、寸法、材料、仕上げ、扉の開き方、配管や配線の位置など、建物を作るための情報を正確に伝えます。
都城高専では、手描きの製図に加えて、コンピュータによる設計(CAD)を学びます。三次元モデルを用いるBIMは、意匠・構造・設備の情報を一つのモデルで確認し、部材同士の衝突や数量を検討するために使われます。
建築設計、施工図、BIMモデル作成、数量算出、設備調整、完成イメージの作成、既存建物のデジタル化などにつながります。
測量・調査 - 敷地と建物を、正確な数値で捉える
建物を建てる前には、土地の高さ、距離、境界、道路との関係を正確に測る必要があります。改修では、古い図面どおりに建物が作られているとは限らないため、現地を測り直すこともあります。
測量実習では、機器を使って位置や高さを測り、誤差を確認し、図面やデータへまとめます。設計前の敷地調査、工事中の位置確認、完成後の記録などの基礎になります。
学年が上がるにつれて、基礎から総合設計へ進む
| 学年 | 主な学びの例 | 身につけること |
|---|---|---|
| 1年生 | 建築設計演習、建築デザイン基礎、建築構造Ⅰなど | 図面の基本、模型、空間の捉え方、建物を支える仕組みの入口 |
| 2年生 | 建築設計演習、構造力学Ⅰ、コンピュータ援用学、建築構造Ⅱ、居住空間計画など | 住宅と生活、力の計算、CADの基礎、木造・鉄骨・RC造の理解 |
| 3年生 | 建築計画Ⅰ、建築設計演習、建築製図、構造力学Ⅱ、材料力学、建築材料、測量学など | 複雑な用途の計画、正確な図面、材料の性質、測量と構造計算 |
| 4年生 | 建築計画、建築史、建築環境工学、構造力学、鋼構造、RC構造、設計演習など | 意匠・環境・構造を組み合わせ、より大きく複雑な建物を考える力 |
| 5年生 | 建築デザイン、建築設備、建築生産、建築法規、都市計画、建築防災、CAD演習、卒業研究など | 実務に近い総合判断、法規、施工・設備、研究や卒業設計をまとめる力 |
実験・実習では、本物の材料と室内環境を数値で確かめる
都城高専の建築学科には、木材、コンクリート、鋼材などの強度を調べる試験機や、室内外の温度・湿度条件を再現して熱の移動を調べる人工気象室があります。
| 設備・実習の例 | 何を確かめるか | 仕事とのつながり |
|---|---|---|
| 250kN精密万能試験機 | 木材や小さなコンクリート試験体などへ力を加え、強さや変形を測る | 材料試験、構造設計、品質管理、研究開発 |
| 2000kNアムスラー型万能試験機 | 大きな力を加え、コンクリート、鋼材、木材などの性能を調べる | 構造実験、建材評価、耐震・補強技術 |
| 人工気象室 | 異なる温度・湿度の室を使い、壁や窓を通る熱、結露、室内環境を調べる | 断熱設計、省エネルギー、空調・換気、建材開発 |
| CAD・3Dプリンター | 図面や三次元モデルを作り、空間や部材の形を視覚化する | 建築設計、BIM、施工図、模型・部材の試作 |
| 測量実習 | 土地や建物の位置、高さ、距離を測り、誤差を処理する | 敷地調査、施工管理、改修調査、公共工事 |
5年生の卒業研究・卒業設計では、地域と社会の課題を扱う
5年生は研究室に所属し、調査、実験、解析、設計などに取り組みます。令和7年度の研究題目には、次のような幅広いテーマがあります。
- 地方都市の駅前空間や中心市街地の空き地を、どのように再生するか
- 木材の強さ、水中に保存された木材、伝統的な木造接合部の性能
- 歴史的建築物の耐震性能や、和洋の構法が混ざる建物の構造
- 2024年8月8日の日向灘地震による揺れと建物への影響
- 火山灰が降ったときにも機能する屋根や排水の方法
- 教室環境と学生の集中、化学実験室の換気と安全性
- 学校の温湿度、住宅の換気開口、断熱・空調、省エネルギー
- 暑さ指数などを予測・表示するプログラム
- 熱を蓄える材料を建築へ利用する方法
- コンクリートの圧縮強度や、繊維を混ぜた材料のひび割れ
- 子育て、商業、都市生活などをテーマにした卒業設計
4.卒業生の何割が就職し、何割が進学するのか
建築学科・本科卒業後の進路
学科別の卒業者数、就職者数、進学者数までそろっている最新年度は令和6年度です。そのため、進路の割合は、数値がすべて確定している令和5年度と令和6年度を使って集計します。
| 卒業年度 | 卒業者 | 就職 | 進学 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 36人 | 28人(77.8%) | 8人(22.2%) | 0人 |
| 令和6年度 | 42人 | 30人(71.4%) | 10人(23.8%) | 2人(4.8%) |
| 2年度合計 | 78人 | 58人(74.4%) | 18人(23.1%) | 2人(2.6%) |
進路の全体数が確認できる令和5・6年度の本科卒業生78人
大まかにいえば、4人のうち約3人が就職し、約1人が進学しています。
令和7年度の最新進路先
建築学科の学科ページには、令和7年度の本科進路として、就職先22人分と進学先13人分が掲載されています。
就職先として掲載:22人
進学先として掲載:13人
公開されている就職・進学先:合計35人分
進学先13人の内訳は、都城高専建築学専攻6人、豊橋技術科学大学1人、熊本大学1人、大分大学2人、東京都立大学1人、前橋工科大学1人、その他1人です。
就職を希望した学生の就職決定率は、令和5・6年度とも100%
令和5年度は、就職希望者28人に対して求人391件、求人倍率14.0倍、就職決定者28人でした。令和6年度は、就職希望者30人に対して求人248件、求人倍率8.3倍、就職決定者30人でした。
県外へ就職する学生が多い
令和5年度の就職者28人のうち宮崎県内は5人、令和6年度の就職者30人のうち宮崎県内は2人でした。2年度を合わせると、宮崎県内は7人、県外は51人です。
| 卒業年度 | 就職者 | 宮崎県内 | 県外 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 28人 | 5人 | 23人 |
| 令和6年度 | 30人 | 2人 | 28人 |
| 2年度合計 | 58人 | 7人(12.1%) | 51人(87.9%) |
大規模な建設会社、設計・内装会社、不動産管理会社、設備会社の本社や主要拠点は、首都圏・関西圏・福岡などに多くあります。そのため、建築学科では就職先の選択肢が全国へ広がる一方、地元就職を最優先する場合は、企業の勤務地、配属範囲、転勤の可能性まで確認する必要があります。
建築学専攻修了後の進路
建築学専攻は人数が少ないため、年度による違いが大きくなります。進路数がそろっている令和4年度から令和6年度をまとめると、次のようになります。
| 修了年度 | 修了者 | 就職 | 進学 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 6人 | 5人 | 1人 | 0人 |
| 令和5年度 | 6人 | 6人 | 0人 | 0人 |
| 令和6年度 | 4人 | 3人 | 0人 | 1人 |
| 3年度合計 | 16人 | 14人(87.5%) | 1人(6.3%) | 1人(6.3%) |
令和7年度の学科ページには、建築学専攻から、ダイキンエアテクノ、八洲建設、ランドブレイン、益田設計事務所、東急電鉄、鹿児島県庁への就職先が掲載されています。
5.本科卒の就職先 - 建設会社を中心に、住宅・設備・維持管理・設計まで広がる
都城高専建築学科の本科から就職した学生は、令和5年度28人、令和6年度30人、令和7年度22人で、合計80人です。
就職先には、大林組、竹中工務店、鹿島建設、清水建設などの総合建設会社、住宅会社、設備会社、内装・空間づくりの会社、ビル管理会社、建材メーカー、自治体・国の機関などがあります。
中学生にも仕事の広がりが分かるように、各社の主な事業内容を基に、この記事では就職先を六つの分野へ整理しました。
| 主な分野 | 就職者 | 本科就職者80人に占める割合 |
|---|---|---|
| 総合建設・地域建設・建築施工 | 29人 | 約36.3% |
| 建築設備・改修・維持管理 | 17人 | 約21.3% |
| 住宅・不動産開発 | 12人 | 15.0% |
| 建築設計・BIM・内装・空間づくり | 11人 | 約13.8% |
| 建材・製造・交通インフラ | 7人 | 約8.8% |
| 官公庁・その他・就職先不明 | 4人 | 5.0% |
| 合計 | 80人 | 100% |
住宅・不動産開発を合わせると41人、約51.3%、さらに設計・BIM・内装まで含めると52人、65.0%です。建築設備・改修・維持管理まで含めると69人、約86.3%となります。
つまり、建物の新築に直接関わる仕事が中心ですが、「設計会社だけ」「工事現場だけ」に進むわけではありません。空調や給排水などの設備、完成後の建物管理、改修、住宅、内装、建材、公務にも進路が広がっています。
以下では、実際の就職先や同業種の企業を例に、建築学科卒業生が担当する可能性のある仕事を紹介します。実際の職種・配属先は、採用区分、本人の希望・適性、資格、入社後の配置によって異なります。
総合建設会社・地域建設会社で、建物を完成へ導く
令和5~7年度では、29人、約36.3%が総合建設会社、地域の建設会社、建築施工を中心とする企業へ進んでいます。
就職先には、大林組、竹中工務店、鹿島建設、清水建設、戸田建設、五洋建設、東急建設、日本国土開発、フジタ、大豊建設、長谷工コーポレーション、吉原建設、吉満組などがあります。
総合建設会社は「ゼネコン」とも呼ばれ、建築主から工事を請け負い、設計、施工、技術開発などを行います。本科卒業生が担当する可能性が高い仕事の一つが、建築施工管理です。
企業例|戸田建設 - 多くの専門会社をまとめ、図面を建物へ変える
戸田建設は、病院、学校、オフィス、工場、文化施設などの建築と土木事業を行う総合建設会社です。都城高専建築学科から、令和5年度と令和6年度に本科の就職実績があります。専攻科からも複数年度の就職実績があります。
建築施工管理は、設計図を受け取った後、工事の順序を考え、必要な会社・人・材料・重機を手配し、完成まで現場全体を管理する仕事です。
一つの現場には、基礎、鉄筋、型枠、鉄骨、外壁、防水、空調、電気、給排水、内装など、多くの専門会社が関わります。作業同士がぶつからないように日程と場所を調整し、図面どおりの品質か、安全に作業できているかを確認します。
戸田建設公式:建築施工管理の社員が、現場でどのような確認・打ち合わせ・調整を行うのかを紹介しています。
- 設計図を読み、施工方法と工事の順序を検討する
- 施工図を作成・確認し、寸法や納まりを関係者と調整する
- 協力会社、職人、資材、重機の手配を行う
- 工事が図面や基準どおりか、写真・測定・検査で確認する
- 危険箇所と作業手順を確認し、事故を防ぐ
- 週間・月間の工程を作り、遅れが出た場合は計画を組み直す
- 設計者、建築主、設備担当、協力会社との打ち合わせを行う
- 完成時の検査、引き渡し、完成図書の作成に関わる
建築製図、CAD、材料、構造、施工、設備、法規、測量、設計演習で身につける説明力がつながる仕事です。現場の規模が大きいほど担当を分けますが、自分の担当だけでなく建物全体を見る力が必要です。
住宅会社・不動産開発会社で、暮らしを形にする
令和5~7年度では、12人、15.0%が住宅会社や不動産開発会社へ進んでいます。
就職先には、住友林業、大和ハウス工業、一条工務店、アイ工務店、国分ハウジング、住友不動産、アイディホーム、オープンハウス・ディベロップメント、飯田産業などがあります。
住宅分野では、設計、施工管理、技術開発、品質管理、アフターサービスなどがあります。大規模建築と比べて、住む人の希望を直接聞き、一棟ごとの暮らしへ反映する機会が多いことが特徴です。
企業例|住友林業 - 設計者と施主の思いを受け取り、木の家を完成させる
住友林業は、木材・建材、戸建住宅、賃貸・事業用建築、研究開発などを行う企業です。都城高専建築学科から、令和7年度に本科の就職実績があります。
同社の施工管理は、設計担当が描いたプランと施主の希望を理解し、基礎、木造躯体、電気・配管、内装、外構など、住宅に関わる工事の品質・安全・工程・費用を管理する仕事です。着工前の図面確認から始まり、工事中は施主との打ち合わせや現場案内も行います。
住友林業公式:「3年目の面接」という物語形式で、住宅の施工管理に携わる若手社員の仕事と成長を描いた採用動画です。
- 敷地、家族構成、生活動線、法規を踏まえて住宅を設計する
- 着工前に図面を確認し、施工しにくい部分や納まりを改善する
- 基礎、構造、断熱、防水、設備、内装の品質を確認する
- 大工、設備会社、外装会社などの工程を調整する
- 施主へ工事の進み方を説明し、現場で確認を行う
- 完成後の点検、不具合対応、リフォームに関わる
- 木造建築の耐震・耐風・耐火・断熱技術を開発する
居住空間計画、木質構造、建築環境、設備、施工、CAD、設計演習が直接つながります。住宅は規模が小さく見えても、構造、断熱、防水、設備、法規、費用を一棟の中で総合する仕事です。
建築設計・BIM・内装・空間づくりに関係する企業
令和5~7年度では、11人、約13.8%が設計、BIM、内装、商業空間、イベント・舞台などの仕事に近い企業へ進んでいます。
就職先には、Koa Architect、岩切設計、M&F tecnica、三越伊勢丹プロパティ・デザイン、イリア、スペース、下森建装、ユニティー、シミズオクト、K GRIT、秀建などがあります。
仕事は「建物の外観を考える」だけではありません。依頼者への聞き取り、現地調査、法規確認、平面・断面の検討、内装や家具の選定、設備との調整、見積もり、工事監理まで含まれます。
企業例|竹中工務店 - 意匠・構造・設備・施工をつなぎ、建築を一体で作る
竹中工務店は、建築の設計・施工、技術開発、まちづくりなどを行う総合建設会社です。都城高専建築学科から、令和5年度と令和7年度に本科の就職実績があります。
大きな建物の設計では、意匠設計者だけで完成形を決めることはできません。構造設計者が柱・梁・壁・基礎を検討し、設備設計者が空調・電気・給排水の仕組みと経路を考え、施工担当者が現場で作れる納まりと工程を検討します。
形の美しさ、使いやすさ、安全性、快適性、環境性能、施工性、費用を同時に考え、分野の異なる技術者が一つの建築へまとめます。
竹中工務店の公式動画では、設計や技術に携わる社員の言葉を通して、建築にどのような考えを込めているのかを紹介しています。
※この動画は外部サイトでの埋め込み再生に対応していないため、リンク先のYouTubeで視聴できます。
- 依頼者の課題と敷地条件を整理し、建築の基本計画を作る
- CAD・BIMで図面や三次元モデルを作成する
- 意匠・構造・設備の図面を重ね、矛盾や衝突を調整する
- 構造計算、環境シミュレーション、材料試験を行う
- 施工方法や費用を考え、実現できる設計へ修正する
- 工事中に図面どおり作られているか確認し、設計意図を伝える
- 新しい構法、木造技術、省エネルギー、デジタル施工を研究する
都城高専で学ぶ四つの柱を、実際のプロジェクトで横断する仕事です。ただし、設計・構造・技術開発などの採用要件は企業と採用区分によって異なり、本科卒業後すぐにすべての職種へ配属されるとは限りません。
公式情報: 竹中工務店公式YouTube「設計と技術、そして感性」 / 竹中工務店公式YouTube「設計施工一貫の仕事」
同業種の仕事例|船場 - 店舗やオフィスの空間を、計画から施工まで作り上げる
船場は、商業施設、オフィス、教育、ヘルスケアなどの空間づくりを行う企業です。令和5~7年度の就職先ではありませんが、三越伊勢丹プロパティ・デザイン、スペース、イリアなどに近い空間づくりの仕事を理解する参考になります。都城高専建築学科からは、令和2年度に本科の就職実績があります。
内装の工事では、建物の構造が完成した後に、壁、天井、床、照明、家具、サイン、設備などを限られた期間で作り込みます。店舗の営業開始日や展示会の開催日が決まっていることも多く、設計意図と品質を守りながら工程を調整します。
船場公式:施工計画職が、安全、品質、工程、費用、労務、環境を管理し、依頼者や協力会社と空間を完成させる仕事を紹介しています。
- 店舗やオフィスの利用目的、ブランド、来客動線を整理する
- 内装図、家具図、天井伏図、照明・設備図などを作る
- 材料、色、照明、サイン、家具を設計意図に合わせて選ぶ
- 建物本体、電気、空調、消防設備と内装を調整する
- 見積もりと工程を作り、協力会社を手配する
- 短い工期の中で、安全・品質・費用を管理する
計画・意匠、CAD、建築設備、材料、施工、プレゼンテーションが組み合わさる仕事です。建物全体の新築とは異なり、人が直接目にし、触れ、過ごす空間の細部を作り込む比重が大きくなります。
建築設備・改修・維持管理に関係する企業
令和5~7年度では、17人、約21.3%が、空調・給排水などの建築設備、建物の改修、施設運営、ビル・マンション管理に近い企業へ進んでいます。六つの分類の中では、総合建設に次いで多い分野です。
就職先には、クラフティア(就職時の社名は九電工)、ダイキンエアテクノ、ダイキンHVACソリューション九州、TAKイーヴァック、オリックス・ファシリティーズ、ザイマックス、ザイマックス九州、ザイマックス関西、シミズ・ビルライフケア、日本メックス、三菱地所プロパティマネジメント、三菱地所コミュニティなどがあります。
建物は完成した瞬間より、使われる期間の方がはるかに長くなります。空調、電気、給排水、エレベーター、防災設備を安定して動かし、外壁や防水を修繕し、古くなった建物の性能を高める技術者が必要です。
企業例|クラフティア(旧:九電工) - 空気と水の設備を設計し、現場で形にする
クラフティアは、電気、配電、空調・衛生、情報通信、エネルギーなどの工事を行う総合設備会社です。2025年10月に九電工から社名を変更しました。都城高専建築学科の令和6年度就職先には、当時の社名である九電工が掲載されています。
空調管工事では、オフィス、病院、ホテル、工場などの空調・換気、給排水衛生、防災設備を設計・施工します。室内を快適にするだけでなく、病院や工場では温度・湿度・清浄度を厳しく管理する設備も扱います。
クラフティア公式:空調管工事の施工管理が、設備図面、現場確認、協力会社との調整などを行う仕事を紹介しています。
- 建物の用途と熱負荷を考え、空調・換気設備を計画する
- 空調機、配管、ダクト、ポンプ、衛生器具などを選ぶ
- CADで設備図や施工図を作成する
- 梁や天井、電気設備と配管・ダクトがぶつからないよう調整する
- 協力会社、材料、作業場所、工程を管理する
- 圧力試験、風量・水量測定、試運転で性能を確認する
- 完成後の点検、修理、設備更新、省エネルギー改修を行う
建築環境工学、建築設備、CAD、施工、熱や空気・水の基礎、法規がつながります。設備は天井裏や機械室に隠れる部分が多いですが、建物の快適性、衛生、安全、エネルギー消費を大きく左右します。
企業例|シミズ・ビルライフケア - 建物を調査し、修繕・改修して長く使う
シミズ・ビルライフケアは、建物の診断、改修設計、工事、維持管理などを行う清水建設グループの企業です。都城高専建築学科から、令和7年度に本科4人の就職実績があります。
建物は、雨、紫外線、温度変化、地震、日常の使用によって少しずつ劣化します。外壁のひび割れ、防水の傷み、設備の老朽化などを放置すると、漏水、部材の落下、故障につながることがあります。
改修では、まず現地を調査し、劣化の場所と原因を確認します。そのうえで、使用を続けながら工事できる方法、費用、工期、安全、入居者への影響を考え、修繕計画を作ります。
シミズ・ビルライフケア公式:マンションの大規模修繕で共通して確認する基本事項を、実際の改修箇所とともに説明しています。
- 外壁、防水、屋根、内装、設備の劣化を現地で調査する
- 図面、過去の修繕記録、点検結果を整理する
- 補修方法、材料、費用、工期を比較して改修計画を作る
- 建物を使用しながら安全に工事できる工程を考える
- 居住者・利用者へ工事内容と注意点を説明する
- 改修工事の品質・安全・工程を管理する
- 空調や照明を更新し、省エネルギー性能を高める
建築材料、施工、構造、設備、法規、調査・記録の力が必要です。新築とは異なり、図面だけでは分からない既存建物の状態を現場で読み取り、限られた条件の中で最適な方法を考えます。
建材・製造・交通インフラに関係する企業
令和5~7年度では、7人、約8.8%が、建材・製品の製造や交通インフラに近い企業へ進んでいます。
就職先には、LIXIL知多工場、旭化成、三菱重工機械システム、京セラ国分工場、ユー・エム・アイ、西日本高速道路などがあります。
たとえば窓、外壁、住宅設備、断熱材などを作る企業では、強度、防水、断熱、耐火、耐久性、施工しやすさを試験します。製造条件や品質を管理し、建築現場から寄せられた不具合の原因を調べ、製品を改善する仕事もあります。
高速道路会社では、道路そのものだけでなく、料金所、休憩施設、管理施設、トンネル設備など、多くの建築・設備を維持します。点検、改修、工事発注、施工管理などに建築の知識が使われます。
- 建材や設備機器の寸法、強度、防水、断熱、耐火性能を試験する
- 製造工程の品質を確認し、不良の原因を調べる
- CADで製品図や施工図を作る
- 設計者・施工会社へ、製品の使い方や納まりを提案する
- 建築物・交通施設を点検し、補修や更新を計画する
- 工事の発注、見積もり確認、現場監督を行う
官公庁では、公共建築と建築行政を支える
令和5~7年度には、都城市役所、鹿児島県庁、防衛省への就職実績があります。この記事の集計では、令和5年度に特定できない就職先1人分も、この区分に含めています。
自治体や国の建築職では、庁舎、学校、公営住宅、体育館などの計画・改修、設計委託、工事発注、現場監督、維持保全に関わります。民間の設計事務所や建設会社が作成した図面・見積もり・工程を確認し、公共施設として必要な品質と予算を守ります。
配属によっては、建築確認、開発、住宅政策、空き家対策、耐震化、景観、防災などに関わることもあります。
- 公共施設の新築・改修計画を作る
- 設計会社へ委託する条件をまとめ、提出図面を確認する
- 工事費を積算し、入札・契約・工事監督に関わる
- 学校や庁舎の耐震化、長寿命化、設備更新を進める
- 建築基準法や条例に基づく審査・指導を行う
- 空き家、防災、景観、地域拠点などの政策を検討する
6.学校で学ぶことは、実際の仕事にどうつながるのか
建築学科の授業と卒業後の仕事を対応させると、次のようになります。
| 学ぶ分野 | 現実社会で使われる場面 | つながる仕事の例 |
|---|---|---|
| 建築計画・居住空間計画 | 住宅、学校、病院、店舗、公共施設の使い方と動線を考える | 意匠設計、住宅設計、施設計画、改修設計 |
| 建築デザイン・設計演習 | 敷地と条件から提案を作り、図面・模型・言葉で説明する | 建築設計、内装設計、企画提案、設計監理 |
| 建築史・都市計画 | 地域の歴史、景観、建築文化、都市の課題を読み取る | まちづくり、文化財・歴史的建築の保存、公共政策 |
| 構造力学・材料力学 | 柱、梁、壁、基礎にかかる力と変形を計算する | 構造設計、耐震診断、施工管理、技術開発 |
| 木質・鋼・RC構造 | 木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の仕組みを考える | 構造設計、住宅技術、施工図、品質管理 |
| 建築環境工学 | 光、熱、湿気、空気、音、断熱、省エネルギーを調整する | 環境設計、性能評価、省エネ改修、建材開発 |
| 建築設備 | 空調、換気、電気、給排水、衛生、防災設備を計画する | 設備設計、設備施工管理、ビル管理、設備更新 |
| 建築材料・材料実験 | 木材、コンクリート、鋼材、仕上げ材の性能と劣化を確かめる | 材料試験、建材開発、品質管理、劣化診断 |
| 建築生産・施工 | 品質、安全、工程、費用、人員、資材を総合して工事を進める | 建築施工管理、内装施工、積算、改修工事 |
| 建築法規 | 用途、面積、高さ、避難、防火などが法律を満たすか確認する | 設計、確認申請、工事監理、建築行政 |
| CAD・BIM・建築製図 | 建物を正確な図面と三次元情報で関係者へ伝える | 設計図、施工図、BIM調整、数量算出 |
| 測量・卒業研究 | 現地を測り、課題を設定し、データを集めて結論を出す | 敷地・建物調査、原因分析、技術提案、研究開発 |
たとえば施工管理では、建築生産だけを使うわけではありません。設計図を読むために計画と製図、柱や壁の重要性を判断するために構造、材料検査のために建築材料、天井裏の調整には設備、変更が法律上可能かを判断するために建築法規が必要です。
設計でも、絵を描く力だけでは不十分です。利用者の動き、構造、断熱、設備、防火、施工方法、予算を同時に考え、他分野の担当者と調整します。自分の案を説明し、指摘を受け、何度も修正する設計演習の経験が実務につながります。
改修や維持管理では、完成した建物を観察し、図面と現状の違い、ひび割れや漏水の原因、設備の劣化、利用者への影響を調べます。卒業研究で身につける「仮説を立て、測り、結果を比較し、根拠を示す力」が役立ちます。
7.資格は将来の仕事にどう役立つのか
建築士は、試験に合格しただけでは免許登録が完了しない
一級建築士・二級建築士の試験は、学科試験と設計製図試験からなります。両方に合格した後、必要な実務経験などの条件を満たして免許登録を行うことで、建築士になります。
2020年3月から制度が変わり、指定科目を修めて卒業した人は、以前より早い段階で建築士試験を受けられるようになりました。その一方で、必要な実務経験は主に免許登録時に確認されます。
一級・二級建築士試験へ申し込める条件を満たしている。
学科試験と設計製図試験に合格した。ただし、必要な実務経験が残っていれば、まだ免許登録はできない。
試験合格と実務経験などの要件を満たし、建築士名簿へ登録された。法律上、建築士資格が必要な設計・工事監理を「建築士」として行える。
都城高専建築学科を卒業した場合の建築士資格
| 資格・進路 | 試験を受けるまで | 免許登録までの実務経験 |
|---|---|---|
| 一級建築士・本科卒 | 指定科目を修めて卒業すれば、卒業後0年で受験可能 | 現在公表されている都城高専建築学科の課程では4年 |
| 一級建築士・本科+建築学専攻 | 本科の指定科目を修めて卒業すれば、専攻科在学中から受験可能 | 修得した指定科目数により2~4年。現在の課程での最短は2年 |
| 二級建築士・本科卒 | 指定科目を修めて卒業すれば、卒業後0年で受験可能 | 現在公表されている課程で必要単位を修得した場合、最短0年 |
一級建築士と二級建築士は何が違うのか
建築物の規模、構造、用途によって、設計・工事監理に必要な資格が決まります。
- 一級建築士:二級建築士では扱えない大規模・複雑な建物を含め、幅広い建築物の設計・工事監理に関わる国家資格です。構造設計一級建築士、設備設計一級建築士など、さらに専門的な制度もあります。
- 二級建築士:主に住宅や比較的小規模な建築物の設計・工事監理に関わる国家資格です。扱える建物には、構造、規模、用途による範囲があります。
- 木造建築士:木造の比較的小規模な建築物を対象とする国家資格です。
「二級は一級より簡単だから価値が低い」という意味ではありません。住宅会社や地域の設計・施工では二級建築士が実務に直結することも多く、一級建築士へ進むための段階として取得する人もいます。
都城高専では、在学中の建築士試験合格実績もある
都城高専の公式ページでは、建築学専攻在学中の資格取得状況が公開されています。令和6年度には一級建築士試験の学科試験1人、設計製図まで含む一級建築士1人が合格し、令和7年度には一級建築士学科試験1人が合格しています。
二級建築士では、令和7年度に学科試験3人、設計製図まで含む二級建築士2人の合格が掲載されています。また、令和3年3月に本科を卒業した学生が、その年の一級建築士試験に学科・設計製図とも合格した実績も紹介されています。
施工・費用・不動産・管理に関係する資格もある
| 資格 | 何に関係するか | 仕事での意味 |
|---|---|---|
| 建築施工管理技士・技士補 | 建築工事の品質、安全、工程、費用、施工体制 | 第一次検定合格者が技士補、実務経験などを満たし第二次検定に合格すると技士。施工管理の代表的な国家資格 |
| 建築積算士補・建築積算士 | 図面から材料・工事数量を拾い、建築費を算定する | 見積もり、予算管理、発注、設計変更の費用確認に役立つ |
| 宅地建物取引士 | 土地・建物の売買や賃貸の重要事項説明 | 住宅、不動産開発、不動産仲介・管理で役立つ国家資格 |
| 管理業務主任者 | マンション管理業者が管理組合へ行う重要事項説明など | マンション管理、修繕計画、管理組合支援に関係する国家資格 |
| 建築設備士 | 空調、電気、給排水など高度な建築設備 | 建築士へ設備設計・工事監理に関する助言を行う資格。受験には学歴・資格と実務経験などの要件がある |
| インテリアプランナー | 住宅、店舗、オフィスなどの室内空間 | 内装計画、家具、照明、仕上げ、設計図書の作成に関係する |
都城高専の公式ページには、2級建築施工管理技士補について、令和5年度10人、令和4年度23人、令和3年度14人の合格実績が掲載されています。建築積算士補、宅地建物取引士、管理業務主任者の合格実績もあります。
8.専攻科へ進むと、将来の選択肢はどう変わるのか
建築学科の本科を卒業した段階でも、総合建設会社、住宅会社、設備会社、設計・内装会社、建物管理会社、官公庁などで働くことができます。
では、さらに2年間、建築学専攻で学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。
一つの専門分野や研究テーマを、さらに深く追究できる
本科では、計画・意匠、構造・防災、環境・設備、材料・施工を幅広く学び、5年生で卒業研究または卒業設計に取り組みます。専攻科へ進むと、その経験を土台に、建築学専攻の特別研究として、より長い期間をかけて課題を掘り下げられます。
たとえば、地域の建物やまちを実際に調査する、木材やコンクリートの強度を実験する、地震時の建物の挙動を解析する、室内の温度・空気・音・光を測る、省エネルギー性能をシミュレーションする、新しい建築空間を設計するといった研究を発展させられます。
調査や実験の方法を自分で組み立て、得られた結果を図表に整理し、他者へ説明して意見を受け、研究を修正する経験も増えます。これは、設計、技術開発、施工計画、建物診断、行政の技術職などで課題を解決するときの土台になります。
建築を単独の科目ではなく、複数分野を結び付けて考えられる
実際の建物では、見た目が美しくても、地震に弱かったり、暑くて大量の空調エネルギーを使ったり、工事が難しく予算を大きく超えたりすれば、よい建築とはいえません。
専攻科では、本科で得た実践的な知識を基に、建築計画、構造、環境・設備、材料・施工などを結び付け、社会や環境への影響まで考える力を高めます。卒業研究で選んだ専門を深めながら、他分野の技術者と協力するための視野も広げます。
学士(工学)を取得し、大学院へ進む道が開ける
建築学専攻は、本科5年間の上に設けられた2年間の課程です。所定の単位を修得し、大学改革支援・学位授与機構の審査で認められると、学士(工学)の学位を取得できます。
学士を取得した後は、企業へ就職するだけでなく、大学院へ進んで研究を続けることもできます。専攻科で研究を進めながら、自分が大学院でさらに追究したい分野を見つけることもできます。
一級建築士の免許登録に必要な実務経験を短縮できる場合がある
建築技術教育普及センターが公表している、令和8年度まで確認済みの都城高専の課程では、本科の指定科目を修めて卒業した段階から、一級建築士試験を最短実務経験0年で受験できます。そのため、専攻科へ進んだ場合は、在学中に受験することも可能です。
専攻科修了後も、就職先は幅広い
令和5年度の建築学専攻からは、オリエンタルコンサルタンツ、東京ガスネットワーク、TAK-QS、戸田建設、大成建設、都城市役所へ進んでいます。令和6年度は、極東興和、FULLCOMMISSION、大林組、三菱地所コミュニティです。
令和7年度の学科ページには、ダイキンエアテクノ、八洲建設、ランドブレイン、益田設計事務所、東急電鉄、鹿児島県庁が掲載されています。
総合建設、設備、設計、建物管理、都市・地域計画、交通、不動産、官公庁まで進路が分かれており、専攻科修了者が一つの職種だけに進むわけではありません。
研究を深めたい、学士(工学)を取得したい、大学院へ進みたい、一級建築士を含む専門資格への土台を厚くしたい、より高度な設計・技術課題に取り組みたい人のための選択肢です。
9.本科卒と専攻科修了では、目指せる企業や仕事に違いがあるのか
本科卒からも、鹿島建設、清水建設、大林組、竹中工務店、戸田建設、五洋建設、大和ハウス工業、住友林業、三菱地所コミュニティなどへの就職実績があります。
また、「本科卒は施工管理だけ、専攻科修了者は設計だけ」と単純に分かれるわけでもありません。設計、施工、設備、維持管理、技術開発、公務など、実際の担当業務は企業の採用区分、本人の希望・適性、配属、入社後の経験や資格によって変わります。
| 比較 | 本科卒 | 専攻科修了 |
|---|---|---|
| 学ぶ期間 | 5年間 | 本科5年+専攻科2年 |
| 専門の学び | 計画・意匠、構造・防災、環境・設備、材料・施工を幅広く学ぶ | 本科の土台を基に、専門分野を深め、複数分野を結び付けて課題を解決する |
| 設計・研究 | 設計演習、実験・実習、卒業研究または卒業設計 | 本科の研究を発展させ、調査・実験・解析・設計により長く取り組む |
| 就職 | 建設、住宅、設備、設計、維持管理、公務などへ就職できる | 同じく幅広い建築関連分野へ就職できる |
| 卒業・修了後 | 就職、都城高専専攻科、大学編入など | 就職、大学院進学など |
| 称号・学位 | 準学士 | 所定の要件と審査を経て学士(工学) |
| 一級建築士試験 | 所定の指定科目を修めれば卒業後すぐ受験可能 | 所定の指定科目を修めれば修了を待たず本科卒業後から受験可能 |
| 一級建築士の免許登録 | 現在確認済みの課程では最短4年の実務経験 | 現在確認済みの本科+専攻科では最短2年の実務経験 |
本科卒業後すぐに就職すれば、20歳前後から実際の建物や工事に関わり、早く実務経験を積めます。一方、専攻科へ進めば、学生として研究・設計に取り組む時間が増え、学士取得や大学院進学へつながります。
どちらが常に上ということではありません。早く現場で学びたいのか、学校で研究や設計をさらに深めたいのか、大学院まで進みたいのかによって、適した進路は変わります。
専攻科が向いているのは、たとえば次のような人です。
- 卒業研究や卒業設計を、さらに発展させたい
- 計画、構造、環境・設備、材料・施工のうち、特定分野を深く学びたい
- 実験、現地調査、数値解析、シミュレーションの力を高めたい
- 学士(工学)の学位を取得したい
- 大学院で建築の研究を続けたい
- 学生の間に一級・二級建築士試験へ挑戦したい
- 研究発表、設計説明、質疑応答を通して、人に伝える力を磨きたい
10.大学編入・大学院進学にはどのような道があるのか
建築学科の本科を卒業した後に進学する場合、主に「都城高専の建築学専攻へ進む」「大学へ編入する」という二つの道があります。専攻科や大学を修了・卒業した後、大学院へ進むこともできます。
都城高専の建築学専攻へ進む
令和5年度は4人、令和6年度は8人、令和7年度は6人が、建築学科本科から都城高専専攻科へ進んでいます。3年度で合計18人です。
同じ学校で研究を続けるため、本科で使ってきた設計室や実験設備、教員とのつながりを生かしやすく、卒業研究を発展させやすい進路です。2年間の学びと審査を経て学士(工学)を取得し、就職または大学院進学へ進みます。
大学へ3年次編入する
本科卒業後、大学の主に3年次へ編入し、建築学、都市計画、環境、構造、デザインなどをさらに学ぶ道があります。
| 年度 | 都城高専専攻科 | 大学など | 合計 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 4人 | 熊本大学1人、鹿児島大学2人、東京都立大学1人 | 8人 |
| 令和6年度 | 8人 | 熊本大学1人、東京都立大学1人 | 10人 |
| 令和7年度 | 6人 | 豊橋技術科学大学1人、熊本大学1人、大分大学2人、東京都立大学1人、前橋工科大学1人、その他1人 | 13人 |
大学編入では、学校ごとに試験科目や出願条件が異なります。数学、英語、建築専門科目、面接、成績、設計作品などが求められる場合があるため、早い段階から志望校の募集要項を確認する必要があります。
専攻科や大学から大学院へ進む
建築学専攻で学士(工学)を取得した後は、大学院へ進学できます。大学へ編入した場合も、大学卒業後に大学院へ進めます。
大学院では、建築設計、都市・地域計画、構造工学、地震防災、建築環境、設備、省エネルギー、材料、施工などから専門を絞り、研究を深めます。大学院を修了したから必ず設計職・研究職になるわけではありませんが、より高度な設計、技術開発、解析、研究に近い仕事を目指す土台になります。
- 本科卒業後すぐに企業や官公庁で働く
- 都城高専の建築学専攻でさらに2年間学ぶ
- 大学の主に3年次へ編入する
- 専攻科や大学から大学院へ進み、研究を続ける
1年生からの設計演習、実験・実習、企業でのインターンシップ、卒業研究などを通して、自分が早く実務へ進みたいのか、設計や研究をさらに深めたいのかを考えられます。
11.建築学科が向いている中学生
建築学科に向いているのは、絵が非常に上手な人や、入学前から建物の専門知識を持っている人だけではありません。
建築は、デザインだけでなく、数学、物理、環境、材料、法律、歴史、地域、費用、人との調整を組み合わせる総合的な分野です。興味の入口も一つではありません。
たとえば、次のような人には向いている可能性があります。
- 住宅、学校、店舗、駅、街並みなどを見て、「なぜこの形や配置なのだろう」と考える
- 間取りを考えたり、絵・図・模型で自分の考えを表したりすることが好き
- 地震や台風に強い建物が、どのような仕組みで支えられているか知りたい
- 数学や物理を、実際の建物や暮らしに役立てたい
- 暑さ、寒さ、光、音、空気など、室内の快適さに興味がある
- 木、鉄、コンクリート、ガラスなど、材料の性質に興味がある
- 古い建物を修理して長く使うことや、歴史的な街並みに興味がある
- 多くの人と協力し、一つの大きなものを完成させたい
- 自分の考えを図面や文章で説明し、意見を受けて直すことができる
- 安全や品質に関わる責任を意識し、手順や期限を守れる
- 一度で正解が決まらない課題を、粘り強く考え続けられる
- 将来、建物やまちを作るだけでなく、守り、直し、使い続ける仕事にも関心がある
「絵が苦手だから建築学科は無理」とは限らない
設計では、空間の考えをスケッチや図面、模型、CAD、3Dモデルなどで表します。そのため、描くことへの抵抗が少ないほど取り組みやすい面はあります。
ただし、入学時点で芸術作品のような絵を描ける必要はありません。建築図面には線の種類、寸法、縮尺、記号などの規則があり、授業と課題を通して学びます。大切なのは、相手に伝わるように何度も修正する姿勢です。
入学前に知っておきたいこと
建築学科は、自由に好きな建物を描くだけの学科ではありません。
設計課題では、敷地、利用者、部屋の広さ、動線、法律、構造、環境、材料などの条件を読み取り、案を考えます。図面や模型を作り、教員や学生の前で説明し、指摘を受けて修正します。締切までに多くの作業を進める計画性も必要です。
構造分野では、力のつり合い、材料の変形、地震時の揺れなどを数式で考えます。環境・設備分野では、熱、空気、水、電気、音、光を扱います。材料・施工分野では、実験結果を計算し、工事の手順、品質、安全、費用を考えます。
現地調査、測量、材料実験、設計製図、CAD、レポート、プレゼンテーション、グループ作業など、机上の勉強以外にもさまざまな活動があります。建築は多くの人の生命と財産に関わるため、「だいたい合っている」では済まない場面もあります。
12.まとめ - 建築学科は、建物とまちを「考え、建て、守る」技術者への入口
都城高専の建築学科は、建物の外観や間取りだけを考える学科ではありません。
建築空間の使いやすさと美しさを考える計画・意匠、地震や風に耐える仕組みを考える構造・防災、温度・空気・光・音・水などの快適さを考える環境・設備、材料を選び、安全・品質・費用・工程を管理して建てる材料・施工を横断して学びます。
1年生から設計演習に取り組み、CADや模型で考えを形にします。測量、建築材料、室内環境などの実験・実習を行い、5年生では卒業研究または卒業設計に取り組みます。
進路の全体数が確定している令和5・6年度では、本科卒業生78人のうち58人、約74.4%が就職し、18人、約23.1%が専攻科や大学などへ進学しています。就職希望者の就職決定率は、両年度とも100%です。
令和5~7年度に本科から就職した80人を、この記事で仕事の内容に近い形へ整理すると、次のようになりました。
総合建設・地域建設・建築施工:29人(約36.3%)
建築設備・改修・維持管理:17人(約21.3%)
住宅・不動産開発:12人(15.0%)
建築設計・BIM・内装・空間づくり:11人(約13.8%)
建材・製造・交通インフラ:7人(約8.8%)
官公庁・その他・就職先不明:4人(5.0%)
建築設備・改修・維持管理まで合わせると46人、約57.5%となり、「新しく建てる」「建物の機能を整える」「完成後も長く使えるように守る」仕事が進路の中心です。一方で、住宅、不動産、設計、内装、建材、公務などにも広がっています。
学校で学ぶ設計製図やCADは、設計図、施工図、BIMモデル、工事説明資料などにつながります。構造力学や材料実験は、地震に耐える骨組みを考え、建物の安全性や品質を確認する仕事につながります。
建築環境・設備の学びは、空調、換気、照明、給排水、省エネルギーの計画や施工管理に使われます。材料・施工、積算、法規の知識は、現場の工程・品質・安全・費用を管理し、既存建物を改修する仕事に役立ちます。
建築士資格については、「受験できること」「試験に合格すること」「実務経験を満たして免許登録すること」を分けて理解する必要があります。都城高専は一級建築士の指定科目認定を受けており、所定の科目を修めれば本科卒業後から試験へ挑戦できますが、免許登録には課程と修得単位に応じた実務経験が必要です。
本科卒業後すぐに企業や官公庁で働くことも、建築学専攻でさらに2年間学ぶことも、大学へ編入することもできます。専攻科や大学から大学院へ進み、設計や研究をさらに深める道もあります。
進学先を考えるときには、「空間を設計したいのか」「地震に強い建物を考えたいのか」「空調や省エネルギーに関わりたいのか」「工事現場を動かしたいのか」「住宅を作りたいのか」「建物を直して長く使いたいのか」「まちや地域を良くしたいのか」「さらに研究を続けたいのか」という視点から、自分の興味を考えてみることが大切です。
13.使用資料
この記事は、時点で公開されている都城高専の公式資料、建築技術教育普及センターの公式資料、就職先企業・同業種企業の公式サイト、公式採用情報、公式YouTubeを使用して作成しています。
都城高専・建築学科に関する主な資料
- 都城高専 建築学科
- 都城高専 建築学科「人材の養成に関する目的その他の教育上の目的」
- 都城高専 建築学科「学科概要」
- 都城高専 建築学科「学科設備」
- 都城高専 建築学科「卒業研究・専攻科特別研究」
- 都城高専 建築学科「2025年度(令和7年度)卒業研究」
- 都城高専 建築学科「卒業生の進路」
- 都城高専 建築学科「学生の資格取得状況」
- 都城高専「学科(本科)卒業者数・専攻科修了者数」
- 都城高専「就職状況(令和5年度)」
- 都城高専「就職状況(令和6年度)」
- 都城高専「専攻科」
- 都城高専専攻科「進学・就職状況」
建築士制度・資格に関する主な資料
- 建築技術教育普及センター「一級建築士・学校課程別の指定科目(九州)」
- 建築技術教育普及センター「一級建築士・指定科目の必要単位数と実務経験」
- 建築技術教育普及センター「二級・木造建築士・学校課程別の指定科目(九州)」
- 建築技術教育普及センター「二級・木造建築士・指定科目の必要単位数と実務経験」

