【どこよりも分かりやすい!】都城高専に進学したら将来なにになれるのか【物質工学科編】

令和5~7年度の公開進路資料から、化学・材料・医薬・食品・バイオ・環境の学びと将来の仕事まで分かりやすく解説

この記事の目次
「都城高専の物質工学科に進学すると、将来は研究者になるのだろうか。それとも、工場で化学薬品を扱う仕事に就くのだろうか」

物質工学科と聞いても、「物質」という言葉が広いため、何を学び、どのような仕事につながる学科なのかをイメージしにくい人は多いと思います。

白衣を着て試験管を振る実験だけをする学科でも、化学式を暗記するだけの学科でもありません。

医薬品、プラスチック、繊維、塗料、半導体材料、電池、飲料、調味料、化粧品、石油化学製品など、私たちの身の回りにある製品は、すべて「どの物質を、どのように組み合わせ、どの条件で作るか」によって性能や品質が変わります。微生物や酵素を利用して食品や有用物質を作る技術、水や空気に含まれる成分を調べる技術、使用済み製品から貴金属を回収する技術も、物質工学の一部です。

都城高専の物質工学科では、1~3年生で化学・生物・化学工学の基礎を学び、4年生から物質工学コース生物工学コースに分かれます。すべての学年で毎週4時間以上の実験があり、5年生では研究室に所属して卒業研究に取り組みます。

この記事では、都城高専が公開している学科情報、令和5~7年度の就職・進学先、学校全体の進路統計を基に、物質工学科で何を学び、それがどのような製品や仕事につながるのかを、中学生と保護者にも分かるように紹介します。

1.結論 - 物質工学科からは、「物質を調べ、作り、安全に量産する」技術者を目指せる

都城高専の物質工学科を卒業すると、たとえば次のような仕事に就く可能性があります。

  • 医薬品の原料や完成品を分析し、決められた品質を満たしているか確認する
  • 研究室で作れた医薬品や材料を、工場でも同じ品質で量産できるように製造条件を整える
  • 樹脂、フィルム、繊維、塗料、電子材料などの新しい素材を合成・評価する
  • 化学工場や製油所で、温度・圧力・流量などを管理し、安全で効率のよい生産を支える
  • 飲料や食品の成分、微生物、香り、味などを調べ、品質を安定させる
  • 半導体の製造条件を調整したり、製造装置の性能を維持したりする
  • 微生物、酵素、細胞などを利用して、食品・医薬品・有用物質を作る
  • 水、排水、土壌、廃棄物などを分析し、環境への影響を調べる
  • 使用済みの電子部品などから、金・銀・レアメタルを分離・回収する
  • 製品や製造工程に異常が起きたとき、測定データから原因を調べ、再発を防ぐ
物質工学科の中心は、「実験室で物質を作ること」だけではありません。
何が含まれているかを調べ、性質や安全性を確かめ、目的に合う物質を作り、工場で安定して生産できる仕組みまで考える学科です。

製品を一つ作る場合でも、複数の知識が必要です。

たとえば錠剤の医薬品なら:
有効成分が正しい量だけ入っているか、不純物が多くないか、決められた時間で体内に溶けるか、長期間保存しても品質が変わらないかを調べます。研究室で少量作れた薬を、工場で何万錠、何百万錠と作っても同じ品質になるように、混ぜ方、温度、時間、装置の動かし方も調整します。
たとえば飲料なら:
水や原料の成分を調べ、微生物が増えないように衛生を管理し、温度や時間を調整して、毎回同じ味と品質になるように製造します。発酵を利用する製品では、酵母などの微生物の働きも管理します。
たとえば半導体なら:
ごく薄い膜を作る、不要な部分を削る、薬液で表面を洗うといった工程を何度も繰り返します。材料の性質、化学反応、温度、圧力、真空、ガスなどを細かく管理しなければ、設計どおりの半導体は作れません。

本科を卒業して企業で働くことも、都城高専の物質工学専攻や大学へ進み、さらに専門的な研究を続けることもできます。

2.都城高専の本科・専攻科・大学編入の仕組み

都城高専には、中学校卒業後に入学する本科と、本科卒業後にさらに学ぶ専攻科があります。

本科は5年間です。本科を卒業すると「準学士」の称号が与えられ、就職、都城高専専攻科への進学、大学への編入などから進路を選びます。大学へ進む場合は、主に大学3年次へ編入する仕組みです。

ルート1 本科学科を卒業して就職

中学校 → 物質工学科5年間 → 企業へ就職

20歳前後から、化学、医薬、食品、半導体、エネルギー、環境などの企業で技術者として働き始めます。

ルート2 専攻科へ進んでから就職

中学校 → 本科5年間 → 物質工学専攻2年間 → 企業へ就職

本科の知識を土台に、より高度な材料開発、物質生産、環境保全の授業や研究に取り組んでから就職します。

ルート3 大学へ編入

中学校 → 本科5年間 → 大学の主に3年次へ編入

大学で応用化学、材料、生命科学、化学工学などをさらに学び、卒業後に就職または大学院進学を選びます。

ルート4 専攻科から大学院へ進学

中学校 → 本科5年間 → 専攻科2年間 → 大学院

研究をさらに深めたい人や、将来、研究・開発に長く関わりたい人が選ぶことのあるルートです。

物質工学専攻とは?

都城高専の専攻科には、物質工学専攻があります。入学定員は4人、修業年限は2年間です。

物質工学専攻では、本科で学んだ化学・材料・生物・化学工学の基礎と実験技術を土台に、新素材開発、物質生産技術、環境保全技術をさらに深く学びます。

本科で学ぶイメージ:
既知の実験方法を用いて物質を合成・分析し、化学反応や装置の基本的な仕組みを理解する。
専攻科で学ぶイメージ:
既存の方法では解決できない課題に対して、実験計画を立て、分析結果を検討し、材料や製造方法を改善する。学会発表や大学・企業との共同研究につながることもあります。

所定の単位を修得し、大学改革支援・学位授与機構の審査で認められると、学士(工学)の学位を取得でき、大学院へ進学できます。

3.物質工学科では何を学ぶのか

物質工学科では、「物質の正体を調べる」「新しい物質を作る」「性質を確かめる」「工場で安全に生産する」「生物の働きを利用する」という一連の技術を学びます。

1~3年生では、分析化学、有機化学、無機化学、物理化学、生物化学、化学工学、電気化学など、両コースに共通する基礎を学びます。4年生からは、物質工学コースと生物工学コースに分かれ、専門を深めます。

分析化学・機器分析 - 「何が、どれだけ入っているか」を調べる

製品の品質を確かめるには、見た目だけでは不十分です。透明な液体でも、複数の成分が溶けていることがあります。ごく少量の不純物が、医薬品の安全性や半導体の性能に影響することもあります。

  • 試料の中に、どのような成分や元素が含まれているのか
  • 目的の成分が、決められた量だけ入っているか
  • 有害な物質や不純物が混ざっていないか
  • 製造の途中と完成後で、成分が変化していないか

都城高専には、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、核磁気共鳴分光装置(NMR)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、ICP発光分光光度計などの分析装置があります。

現実社会では:
医薬品の純度試験、食品の成分分析、飲料中の微量成分の確認、工場排水の分析、金属材料の元素分析、製品不良の原因調査などにつながります。

有機化学・無機化学・材料化学 - 分子や元素を組み合わせ、新しい材料を作る

有機化学では、主に炭素を含む物質の構造や反応を学びます。医薬品、樹脂、繊維、塗料、接着剤、香料など、多くの製品に関係します。

無機化学では、金属、セラミックス、ガラス、触媒、半導体材料などに関係する元素や化合物を扱います。材料化学では、物質を作るだけでなく、強さ、熱への耐性、電気の通しやすさ、光への反応、生体とのなじみやすさなどを調べます。

  • どのような分子構造にすれば、必要な性質が得られるのか
  • 反応温度、時間、濃度を変えると、生成物はどう変わるのか
  • 作った材料は、熱や水、光、薬品に耐えられるのか
  • 電子機器、医療、環境など、目的に合う機能を持っているか
現実社会では:
医薬品原料、電子材料、フィルム、繊維、機能性樹脂、触媒、吸着材、医療用材料などの研究・製造・評価に使われます。

物理化学・電気化学 - 化学反応が起こる理由と、エネルギーの動きを理解する

物理化学では、反応がどちらへ進むのか、どのくらい速く進むのか、温度や圧力が変わるとどうなるのかを、数式や測定結果から考えます。

電気化学では、化学反応と電気の関係を学びます。電池、電気分解、金属の腐食、めっき、センサーなどに関係する分野です。

現実社会では:
蓄電池、燃料電池、水素製造、金属精製、腐食防止、半導体、化学センサーなどの技術につながります。

化学工学 - ビーカーで作れたものを、工場で安全に量産する

研究室で100ミリリットルの液体を作ることと、工場で何トンもの製品を作ることは同じではありません。

量が大きくなると、熱が逃げにくくなる、混ざり方が変わる、反応が急に進む、必要な時間が変わるといった問題が起きます。そこで、装置の大きさ、温度、圧力、流量、かき混ぜ方、加熱・冷却の方法などを考えます。

  • 原料をどの順番で、どの速さで入れるか
  • 反応中の温度や圧力をどう安定させるか
  • 必要な成分と不要な成分をどう分離するか
  • エネルギーや水の使用量をどう減らすか
  • 異常反応、漏えい、火災などをどう防ぐか
「化学反応を知っている」だけでなく、「その反応を工場で安全・安定・効率的に続ける方法」を考えるのが化学工学です。

生物化学・微生物工学・細胞・遺伝子工学 - 生物の働きをものづくりに利用する

生物工学では、タンパク質、酵素、遺伝子、免疫、細胞培養、微生物などを学びます。

微生物や酵素は、食品の発酵だけでなく、医薬品の製造、有用物質の生産、環境浄化、植物資源の利用などにも使われます。細胞や遺伝子の働きを調べることは、病気の仕組みや新しい治療法を考える基礎にもなります。

  • 微生物は、どのような条件でよく増えるのか
  • 酵素は、どの物質に働き、どの反応を速めるのか
  • 細胞や遺伝子の働きを、どのように調べるのか
  • 生物を利用して、有用物質を効率よく生産できるか
  • 有害物質を分解する微生物を環境改善に使えるか
現実社会では:
発酵食品、飲料、医薬品、検査薬、培養、酵素製品、バイオ燃料、排水処理、資源循環などにつながります。

4年生から、物質工学コースと生物工学コースに分かれる

コース 主に学ぶ内容 つながる分野の例
物質工学コース 合成、分析、物性測定、機能評価、製造システム、有機・無機・電子材料、工業熱力学、輸送現象など 医薬品、新素材、石油化学、半導体・電子材料、センサー、化学プラント
生物工学コース タンパク質、酵素、微生物、細胞、遺伝子、免疫、環境工学、生物反応など 医薬品、食品、発酵、バイオテクノロジー、環境浄化、資源利用

ただし、4年生から完全に別の学科になるわけではありません。1~3年生で共通の土台を作り、その上で専門を深めます。企業の仕事でも、材料の合成と分析、微生物と化学、製造と品質管理など、両コースの知識が組み合わさることがあります。

毎学年、週4時間以上の実験に取り組む

都城高専の公式説明では、物質工学科はすべての学年で毎週4時間以上の実験を行います。1~4人で実験し、実験後にはレポートを作成して教員へ報告します。

実験では、薬品を混ぜて結果を見るだけではありません。必要な量を正確に量り、装置を正しく使い、安全に作業し、得られた数値を計算し、グラフや表にまとめます。予想と違う結果が出たときには、操作、装置、試料、計算のどこに原因があるかを検討します。

装置の例 何を調べる装置か 身近な用途のイメージ
GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計) 複数の有機化合物を分け、どのような成分かを調べる 脂質、残留溶媒、残留農薬、香りの成分など
NMR(核磁気共鳴) 原子のつながり方から、化合物の構造を調べる 合成した有機化合物が目的の構造か確認する
HPLC(高速液体クロマトグラフィー) 液体に溶けた複数の成分を分離し、種類や量を調べる 医薬品、食品、飲料などの成分分析
ICP発光分光光度計 水溶液に含まれる元素の種類と量を調べる 金属、排水、環境試料などの元素分析
示差熱・熱重量測定 加熱したときの熱や重さの変化を測る 材料が分解する温度や、熱に対する安定性を調べる

5年生の卒業研究では、地域や世界の課題に取り組む

5年生になると研究室に所属し、一人ひとりが研究テーマに取り組みます。都城高専の研究紹介には、次のようなテーマが掲載されています。

  • 光と小型の反応装置を利用した新しい有機合成法や、バイオマスから水素を作る技術
  • 金属分離、抗菌、高吸水などの機能を持つマイクロカプセル
  • 電子材料、光学材料、分離膜、生体材料などの新素材
  • 廃棄された電子機器から貴金属や有価金属を効率よく回収する吸着剤・抽出剤
  • 微生物や微細藻類を使った物質生産、環境改善、農業廃棄物の有効利用
  • がん細胞の移動や増殖にも関係する細胞骨格の研究
  • 医療分野で使う、生体になじみやすい機能性高分子材料
  • 木質副産物、魚の鱗、シラスなど、地域の天然資源を活用する研究
  • 稲わらや木に含まれるセルロースを分解する微生物や酵素の研究
物質工学科では、「理論を学ぶ → 実験する → 数値で確かめる → 原因を考える → 改善する」という経験を5年間かけて積み重ねます。

4.卒業生の何割が就職し、何割が進学するのか

物質工学科・本科卒業後の進路

学科別の卒業者数、就職者数、進学者数までそろっている最新年度は令和6年度です。そのため、進路の割合は、数値がすべて確定している令和5年度と令和6年度を使って集計します。

卒業年度 卒業者 就職 進学 その他
令和5年度 44人 29人(65.9%) 14人(31.8%) 1人(2.3%)
令和6年度 42人 29人(69.0%) 13人(31.0%) 0人
2年度合計 86人 58人(67.4%) 27人(31.4%) 1人(1.2%)

進路の全体数が確認できる令和5・6年度の本科卒業生86人

就職 67.4% 進学 31.4% その他 1.2%

大まかにいえば、約3分の2が就職し、約3分の1が進学しています。

令和7年度の最新進路先

物質工学科の学科ページには、令和7年度の本科進路として、就職先21人分と、都城高専専攻科への進学8人分が掲載されています。

就職先として掲載:21人

進学先として掲載:8人

公開されている就職・進学先:合計29人分

2026年8月時点では、学校全体の統計ページに令和7年度の物質工学科卒業者総数が掲載されていません。そのため、令和7年度については就職率・進学率を計算せず、公開されている進路先人数だけを示しています。

就職を希望した学生の就職決定率は100%

令和5年度は、就職希望者29人に対して求人425件、求人倍率14.6倍、就職決定者29人でした。令和6年度は、就職希望者29人に対して求人343件、求人倍率11.8倍、就職決定者29人でした。

令和5年度・令和6年度ともに、物質工学科の就職決定率は100%です。
求人倍率は、学生一人に対して単純計算で10件を超える求人があったことを表します。ただし、本人が希望するすべての職種・企業へ自由に入れるという意味ではありません。

物質工学専攻修了後の進路

専攻科は人数が少ないため、年度による違いが大きくなります。進路数がそろっている令和4年度から令和6年度をまとめると、次のようになります。

修了年度 修了者 就職 進学 その他
令和4年度 8人 4人 4人 0人
令和5年度 7人 2人 4人 1人
令和6年度 8人 0人 8人 0人
3年度合計 23人 6人(26.1%) 16人(69.6%) 1人(4.3%)

この3年度では、専攻科修了者の約7割が大学院へ進学しています。令和7年度の学科ページには、専攻科から中外製薬工業へ1人、大学院へ6人の進路先が掲載されています。

5.本科卒の就職先 - 化学を軸に、医薬・食品・半導体まで広がる

都城高専物質工学科の本科から就職した学生は、令和5年度29人、令和6年度29人、令和7年度21人で、合計79人です。

就職先には、化学・素材メーカー、製薬会社、飲料・食品会社、石油・ガス会社、半導体関連企業、環境・資源リサイクル企業などが含まれています。

中学生にも仕事の広がりが分かるように、各企業の主な事業内容を基に、この記事では就職先を六つの分野へ整理しました。

主な分野 就職者 本科就職者79人に占める割合
化学・素材・日用品・金属 17人 約21.5%
医薬品・医療・バイオ 15人 約19.0%
半導体・電子・製造装置 13人 約16.5%
石油・エネルギー・ガス・石油化学 12人 約15.2%
食品・飲料・たばこ 12人 約15.2%
環境・分析・設備・その他 10人 約12.7%
合計 79人 100%
最も多い単独分野は「化学・素材・日用品・金属」の17人、約21.5%です。
「医薬品・医療・バイオ」と合わせると32人、約40.5%、さらに石油・エネルギー・ガス・石油化学まで含めると44人、約55.7%になります。

つまり、化学を直接使う産業が進路の中心ですが、特定の一業界だけに集中しているわけではありません。分析、品質管理、製造条件の調整、安全管理といった力は、医薬品、食品、半導体、環境など、異なる業界でも共通して必要とされます。

分野別人数は、学校が公表した就職者数と就職先を基に、この記事で独自に一社一分野へ分類したものです。令和5年度は、学校全体の資料では本科就職者29人ですが、学科ページの本科・専攻科を合わせた一覧から専攻科の就職先2人分を除くと、本科の就職先を28人分までしか特定できません。そのため、残る1人は「環境・分析・設備・その他」に含め、就職先不明として集計しています。

以下では、実際の就職先を「企業例」として紹介します。仕事内容は、各企業の公式採用情報や公式動画を基に、物質工学科で学ぶ内容とのつながりを示したものです。実際の職種・配属先は、採用区分、本人の希望・適性、入社後の配置によって異なります。

化学・素材・日用品・金属に関係する企業

令和5~7年度では、17人、約21.5%が化学・素材・日用品・金属分野へ進んでいます。六つの分類の中では最も多い分野です。

就職先には、旭化成、大日精化工業、日東電工、グンゼ、ユニチカ、花王、ピー・アンド・ジー、田中貴金属工業、日本乳化剤、三井化学などがあります。

これらの企業では、樹脂、フィルム、繊維、色材、洗剤、電子材料、金属材料、工業用薬品など、さまざまな製品を扱います。製品開発だけでなく、原料の受入、製造条件の管理、品質検査、設備改善、安全・環境管理にも物質系技術者が必要です。

同業種の仕事例|ダイセル - 化学反応を工場の製造工程へつなげる
化学メーカー・化学工学・生産技術

ダイセルは、セルロース、有機合成品、樹脂、電子材料などを扱う化学メーカーです。化学工学系の技術者は、工場の反応・分離・精製などの工程を、安全で安定した状態に保ち、生産性や品質を高める仕事に関わります。

工場では、反応器、蒸留塔、配管、ポンプ、熱交換器など、多くの装置がつながっています。一つの温度や流量を変えると、製品の品質、生産量、エネルギー使用量、安全性が変化するため、現場のデータを確認しながら条件を検討します。

ダイセル公式:化学工学系社員の一日に密着し、工場での打ち合わせ、データ確認、製造現場との連携、課題改善などを紹介しています。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 反応温度、圧力、流量、濃度などの製造データを確認する
  • 製品の品質が変化した原因を、原料や工程から調べる
  • 研究室で考えた製法を、工場規模へ拡大する
  • 原料・水・エネルギーを減らし、生産効率を高める
  • 新しい設備や測定機器の導入を検討する
  • 異常反応や漏えいを防ぐため、安全対策を改善する

化学工学、工業熱力学、輸送現象、分析化学、安全工学、情報処理などを組み合わせる仕事です。研究室の実験と大規模な工場をつなぐ役割ともいえます。

ダイセルは、この記事で集計した都城高専物質工学科の令和5~7年度の就職先ではありません。旭化成、三井化学、大日精化工業などと同じ化学・素材分野で、化学工学系技術者の仕事を具体的に理解するための参考動画です。

公式情報:ダイセル公式YouTube「化学工学系社員の1日に密着!」

医薬品・医療・バイオに関係する企業

令和5~7年度では、15人、約19.0%が医薬品・医療・バイオ分野へ進んでいます。

就職先には、第一三共、第一三共ケミカルファーマ、第一三共プロファーマ、田辺三菱製薬工場、沢井製薬、太陽ファルマテック、帝人ファーマ、日本血液製剤機構、中外製薬工業などがあります。

企業例|沢井製薬 - 薬を分析し、工場で同じ品質を作り続ける
医薬品・生産技術・品質管理

沢井製薬は、ジェネリック医薬品を開発・製造する企業です。都城高専物質工学科から、令和6年度に本科の就職実績があります。令和5年度には物質工学専攻からの就職実績もあります。

医薬品工場では、原料を量り、混ぜ、粒状にし、錠剤の形にし、コーティングし、検査・包装します。しかし、形が同じならよいわけではありません。有効成分の量、不純物、硬さ、溶け方、保存中の変化などを、決められた方法で確認する必要があります。

沢井製薬の公式採用情報では、生産技術職が、研究部門で試作された医薬品を工場でも安定して大量生産できるか確認し、製造条件の最適化や既存工程の改善を行うと説明されています。品質管理職は、原料・包装資材の受入試験から完成品の分析、外観、硬度、溶け方までを確認します。

沢井製薬公式:本社と工場の品質保証職が、製造工程と品質をどのように確認し、患者へ届く薬の安全性と信頼性を守るのかを紹介しています。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 原料や完成した医薬品を分析装置で測定する
  • 錠剤の成分量、純度、硬さ、溶け方などを試験する
  • 少量の試作から工場での大量生産へ移すため、製造条件を調整する
  • 工程中に異常な数値が出たとき、原因を調べる
  • 製造や試験が決められた手順どおり行われたか、記録を確認する
  • 設備や工程を改善し、品質を保ちながら生産を安定させる

分析化学、有機化学、物理化学、機器分析、化学工学、安全工学、実験レポートで身につける正確な記録などがつながる仕事です。生産技術系総合職・製造技術職については、高専卒も募集対象であることが公式採用情報に示されています。

公式情報: 沢井製薬「工場採用専用サイト」沢井製薬「新卒採用募集要項」

半導体・電子・製造装置に関係する企業

令和5~7年度では、13人、約16.5%が半導体、電子部品、製造装置などに関係する企業へ進んでいます。

就職先には、ラピスセミコンダクタ、京セラ、東京エレクトロン、東京エレクトロンFE、アプライドマテリアルズジャパン、宮崎日機装、ダイキン工業、三菱重工業総合研究所、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンなどがあります。

半導体は電子工学の製品ですが、その製造工程では、薄膜材料、薬液、ガス、表面反応、洗浄、真空、熱処理など、多くの化学・材料技術が使われます。

企業例|アプライドマテリアルズジャパン - 半導体製造装置を設置・調整し、性能を維持する
半導体製造装置・カスタマーエンジニア

アプライドマテリアルズは、半導体やディスプレイを作るための製造装置を設計・製造・サービスする企業です。都城高専物質工学科から、令和7年度に本科の就職実績があります。

半導体製造装置は、工場へ運び込んだだけでは使えません。装置を組み立て、配管や各部を確認し、試運転を行い、目的の性能が出るように調整します。稼働後に異常が起きたときには、装置のデータや製品の状態から原因を調べ、部品交換や条件調整を行います。

同社の公式採用情報では、フィールドサービスエンジニアが装置のトラブルを解決し、性能を向上させること、プロセスサポートエンジニアが半導体を作る条件を最適化すること、インストレーションエンジニアが装置の搬入・組立・調整・設置を行うことが説明されています。

Applied Materials公式:日本で働くカスタマーエンジニアの仕事と職場を紹介する採用動画です。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 半導体工場へ製造装置を設置し、試運転・調整する
  • 装置の定期点検、部品交換、性能確認を行う
  • 異常データや製品の状態から、故障や工程不良の原因を調べる
  • 温度、圧力、真空、ガス、薬液などの条件を確認する
  • 顧客の技術者へ作業内容や改善方法を説明する
  • 半導体の製造条件を調整し、歩留まりや性能の改善を支援する

材料化学、物理化学、真空や気体の扱い、分析、データ処理、安全管理が役立ちます。一方で、装置には機械・電気・制御の知識も必要になるため、入社後に担当装置や周辺技術を学び続ける仕事です。

公式情報:アプライドマテリアルズジャパン「採用情報」

石油・エネルギー・ガス・石油化学に関係する企業

令和5~7年度では、12人、約15.2%が石油、エネルギー、ガス、石油化学に関係する企業へ進んでいます。

就職先には、ENEOS、出光興産、富士石油、東京ガス、Daigasガスアンドパワーソリューション、丸善石油化学などがあります。

製油所や化学工場では、原油や原料を加熱・反応・分離し、燃料や化学製品の原料を作ります。大規模な装置を24時間安定して動かすため、化学反応、熱、流体、分析、安全の知識が使われます。

企業例|ENEOS - 製油所の温度・圧力・流量を管理し、安定生産を支える
製油所・プロセス管理・エネルギー

ENEOSは、燃料、潤滑油、石油化学製品などを製造・供給する企業です。都城高専物質工学科から、令和5年度に1人、令和6年度に1人、令和7年度に2人の本科就職実績があります。

製油所では、原油を沸点の違いで分けたり、化学反応によって成分を変えたりして、ガソリン、灯油、軽油、化学製品の原料などを作ります。装置の中で何が起きているかを直接見ることはできないため、温度、圧力、流量、分析値などから状態を判断します。

ENEOS公式:製油所でプロセス管理を担当する社員へのインタビューです。大規模な製造装置を安定して動かす仕事の考え方を確認できます。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 製造装置の温度、圧力、流量、液面などを監視する
  • 製品や工程中の試料を分析し、品質を確認する
  • 需要に合わせて生産量や運転条件を調整する
  • エネルギー使用量を減らし、効率のよい運転方法を考える
  • 設備の点検・補修計画や、定期的な大規模整備に関わる
  • 異常の兆候を見つけ、安全に停止・復旧できるように対応する

化学工学、物理化学、工業熱力学、輸送現象、機器分析、安全工学などが強く関係します。製品の研究よりも、工場全体の状態を見ながら「安定して作り続ける」ことに重点を置く仕事も多くあります。

公式情報:ENEOS公式YouTube「プロセス管理の仕事」

食品・飲料・たばこに関係する企業

令和5~7年度では、12人、約15.2%が食品・飲料・たばこ分野へ進んでいます。

就職先には、サントリーホールディングス、アサヒビール、味の素、DM三井製糖、ヤマエ食品工業、プレジィール、日本たばこ産業などがあります。

食品工場にも、化学と生物の知識が必要です。原料や水の成分、糖度、酸度、香り、色、微生物などを調べ、加熱、冷却、混合、発酵、ろ過といった条件を管理します。

企業例|サントリー - 化学分析と微生物管理で、飲料の味と品質を守る
飲料・醸造・品質管理

サントリーグループは、清涼飲料、ビール、ウイスキーなどを製造しています。都城高専物質工学科から、令和5年度に2人、令和6年度に1人、令和7年度に1人の本科就職実績があります。

サントリーの公式採用サイトには、物質系高専出身者が、飲料の製造、ビールの醸造、品質管理、ウイスキーの醸造・貯蔵・ブレンド、ワインの中味製造などを担当している例が掲載されています。

ビール工場の品質管理では、微生物や化学分析の結果を確認し、微生物を発生させず、化学的な品質を安定させる仕組みを作ります。醸造工程では、原料の量、温度、時間、分析結果などを見ながら、毎回同じ品質になるように製造条件を調整します。

サントリー公式:天然水を製品として届けるまでの「ものづくり」を短い映像で紹介しています。詳しい仕事内容は、下記の物質系高専出身者インタビューで確認できます。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 原料、水、製造途中の液体、完成品を化学分析する
  • 微生物検査を行い、衛生状態を確認する
  • 温度、時間、原料の量を調整し、味と品質を作り込む
  • 酵母などを使う発酵工程を管理する
  • 香りや味を人の感覚でも確かめる官能検査を行う
  • 分析値や製造データから、品質の変化や設備の問題を見つける
  • 水やエネルギーの使用量、排水処理などを改善する

生物化学、微生物工学、分析化学、機器分析、化学工学、統計的なデータ処理などがつながります。「食品会社では調理をする」というより、科学的な測定と工程管理によって、安全で同じ品質の製品を作り続ける仕事です。

公式情報: サントリー「製造部門・社員インタビュー」サントリー「ビール工場・品質管理担当」サントリー「ビール工場・醸造担当」

環境・分析・資源リサイクルに関係する企業

「環境・分析・設備・その他」には、日鉄環境、イー・アール・シー高城、AREホールディングス、国立印刷局、三島光産、森トラスト・ビルマネジメント、アマゾンジャパン、NTT-MEなどが含まれます。

この中には事業内容が大きく異なる企業もあります。環境分析や資源リサイクルでは物質工学との直接的なつながりが分かりやすい一方、設備管理、物流、通信などでは、実際の配属職種によって専門の生かし方が変わります。

企業例|AREホールディングス - 廃棄物から貴金属を分析・分離し、再び資源にする
貴金属リサイクル・分析・精製

AREホールディングスのグループは、電子・半導体、歯科、宝飾などから出る貴金属を含む原料を回収し、分析、分離・精製、製品化する事業を行っています。都城高専物質工学科から、令和7年度に本科の就職実績があります。

回収した原料に金や銀が含まれていても、見ただけでは正確な量は分かりません。まず、原料の一部を代表試料として取り出し、X線やICPなどで成分を分析します。その結果に基づいて、薬液を用いる湿式処理や高温を使う乾式処理などで、目的の金属を分離・精製します。

AREホールディングス公式:アサヒメタルファイン坂東工場で、リサイクル原料から金地金を製造する工程を紹介しています。

物質工学科卒業生が担当する可能性のある仕事
  • 回収原料から正確な分析用試料を作る
  • X線分析やICPなどを使い、金・銀・その他の元素量を測る
  • 薬液、沈殿、抽出、電気分解、加熱などを使って金属を分離・精製する
  • 製品となる金属の純度を確認する
  • 排水や排ガスを処理し、環境基準を守る
  • 回収率、安全性、生産効率を高める製造方法を検討する

分析化学、無機化学、電気化学、分離操作、化学工学、環境工学などが直接つながります。都城高専でも、廃棄された電子機器などから貴金属・有価金属を回収する吸着剤や抽出剤の研究が行われています。

公式情報:AREホールディングス公式YouTube「金地金の製造工程」

6.学校で学ぶことは、実際の仕事にどうつながるのか

物質工学科の授業と卒業後の仕事を対応させると、次のようになります。

学ぶ分野 現実社会で使われる場所 つながる仕事の例
分析化学・機器分析 医薬品、食品、飲料、排水、金属、化学製品 品質管理、環境分析、製品試験、故障・不良解析
有機化学 医薬品、樹脂、塗料、接着剤、香料、洗剤 合成、製造技術、原料評価、研究開発
無機化学・材料化学 金属、セラミックス、半導体、触媒、電子材料 材料製造、物性評価、品質試験、工程開発
物理化学・電気化学 電池、水素、めっき、腐食防止、金属精製、センサー 反応解析、電池評価、プロセス改善、材料評価
化学工学・熱力学・輸送現象 化学工場、製油所、医薬品工場、食品工場 生産技術、工程管理、設備改善、量産化
生物化学・微生物工学 発酵食品、飲料、医薬品、酵素、排水処理 微生物検査、発酵管理、培養、品質管理
細胞・遺伝子・酵素工学 バイオ医薬、検査、研究機関、機能性食品 培養、試験、研究補助、バイオ生産
安全工学・環境工学 工場、研究所、排水・廃棄物処理設備 安全管理、環境管理、法令対応、事故防止
学生実験・卒業研究 試験、開発、品質管理、製造現場 実験計画、測定、原因調査、記録・報告、改善

たとえば、HPLCなどを使って成分を分けて量を測る考え方は、医薬品の有効成分、飲料の成分、食品中の物質を調べる仕事に共通します。ICPなどで元素を調べる技術は、金属材料、工場排水、貴金属リサイクルなどに使われます。

化学工学で学ぶ「熱をどう移すか」「液体や気体をどう流すか」「物質をどう分離するか」という考え方は、製油所だけでなく、医薬品工場や食品工場の量産にも必要です。

微生物を扱う技術は、発酵食品や飲料だけでなく、医薬品、酵素、環境浄化にもつながります。安全工学や正確な記録は、薬品を扱うほぼすべての職場で必要です。

学校では科目ごとに学びますが、仕事では「分析だけ」「化学反応だけ」で問題が解決するとは限りません。化学、生物、装置、データ、安全を組み合わせて、品質や生産上の課題を解決します。

7.資格は将来の仕事にどう役立つのか

都城高専が公開している資格資料には、物質工学科に関係する資格として、危険物、環境、高圧ガス、計量、放射線、化学物質の取扱いなど、幅広い資格が掲載されています。

  • 危険物取扱者:引火性の液体など、消防法上の危険物を扱う施設に関係する資格。化学工場、製油所、研究施設などで役立つことがあります。
  • 高圧ガス製造保安責任者:高圧ガスを製造する設備の保安に関係する資格。化学工場、半導体工場、エネルギー関連施設などと関係します。
  • 公害防止管理者:工場から出る大気、水質、騒音、振動などの公害防止に関係する資格。環境管理や工場管理で役立ちます。
  • 一般計量士・環境計量士:長さ、質量、濃度、騒音、振動などの正確な計量・証明に関係する資格。分析会社や環境測定の仕事につながります。
  • 有機溶剤作業主任者・特定化学物質作業主任者:健康への影響がある化学物質を扱う作業の安全管理に関係する資格・技能講習です。
  • 放射線取扱主任者・エックス線作業主任者:放射線やエックス線を利用する設備・分析装置の安全管理に関係します。
  • エネルギー管理士:工場や事業所で、熱や電気を効率よく使うための管理に関係する資格です。

学校資料には、物質工学科卒業後、申請により毒物・劇物取扱責任者に関する資格上の扱いを受けられる旨も掲載されています。ただし、実際に責任者として選任されるための条件や申請手続は、勤務先、自治体、履修内容などによって確認が必要です。

資格を持っていれば、希望する企業や職種へ必ず就職できるわけではありません。また、すべての学生がすべての資格を取得する必要もありません。将来扱いたい設備・物質・業務に合わせて選ぶことが大切です。

物質工学科で最も重要なのは、資格名の数ではなく、化学・生物の基礎、実験技術、安全意識、測定結果を正しく記録・説明する力です。資格は、それらの知識を特定の仕事や法令に結び付ける手段の一つです。

8.専攻科へ進むと、将来の選択肢はどう変わるのか

物質工学科の本科を卒業した段階でも、化学、医薬、食品、エネルギー、半導体、環境などの企業で働くことができます。

では、さらに2年間、物質工学専攻で学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。

一つの研究テーマに、より長く取り組める

本科でも5年生で卒業研究を行いますが、専攻科へ進むと、研究をさらに2年間続けられます。

実験条件を変えて結果を比較する、新しい分析方法を導入する、材料の性能を高める、製造工程を改善するなど、研究の深さと範囲を広げられます。成果を学会で発表したり、大学・企業との共同研究へ参加したりする機会もあります。

新素材開発・物質生産・環境保全を、より高度に学べる

物質工学専攻の教育目的には、本科の基礎的・実践的な知識と技術の上に、より高度な新素材開発、物質生産、環境保全の技術を身につけることが示されています。

たとえば、新しい材料を作るだけでなく、なぜその性能が得られたのかを分析する、量産時の工程を考える、使用後の回収・再利用や環境への影響まで検討する、といった幅広い視点を養います。

大学院へ進学する学生が多い

令和4~6年度の物質工学専攻修了者23人のうち、16人、約69.6%が大学院へ進学しています。

進学先には、九州大学、東京工業大学、東北大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、筑波大学、広島大学などの大学院があります。令和7年度の学科ページには、九州大学大学院2人、大阪大学大学院、東京科学大学大学院2人、名古屋大学大学院が掲載されています。

専攻科から企業へ就職する道もある

専攻科修了後に就職する学生もいます。令和5年度にはDICと沢井製薬、令和7年度には中外製薬工業への就職実績が学科ページに掲載されています。

専攻科は、「本科では就職できないから進む場所」ではありません。研究を深めたい、学士の学位を取得したい、大学院進学を考えている、より高度な研究・開発へ近づきたい人のための選択肢です。

9.本科卒と専攻科修了では、目指せる企業や仕事に違いがあるのか

就職実績を見る限り、専攻科へ進まなければ大手企業や化学・医薬品メーカーに就職できない、というわけではありません。

本科卒からも、旭化成、ENEOS、出光興産、第一三共、サントリー、味の素、中外製薬工業、東京エレクトロン、アプライドマテリアルズジャパン、三井化学などへの就職実績があります。

したがって、「本科卒は製造だけ、専攻科修了者は研究だけ」という単純な分かれ方でもありません。実際の担当業務は、企業の採用区分や配属、本人の適性、入社後の経験によって変わります。

比較 本科卒 専攻科修了
学ぶ期間 5年間 本科5年+専攻科2年
学ぶ内容 化学・材料・生物・化学工学の基礎と実践 新素材開発、物質生産、環境保全をより高度に学ぶ
実験・研究 毎学年の実験と5年生の卒業研究 本科の研究をさらに発展させ、より長く専門研究に取り組む
就職 幅広い技術系企業へ就職できる 幅広い技術系企業へ就職できる
卒業・修了後 就職、専攻科、大学編入 就職、大学院進学
称号・学位 準学士 所定の要件と審査を経て学士(工学)

専攻科が向いているのは、たとえば次のような人です。

  • 卒業研究の続きを、もう少し深く追究したい
  • 分析装置や研究方法をさらに使いこなしたい
  • 材料開発、生産技術、環境技術を高度に学びたい
  • 学士(工学)の学位を取得したい
  • 大学院で研究を続けたい
  • 将来、研究・開発に近い仕事へ進むための土台を厚くしたい

10.大学編入・大学院進学にはどのような道があるのか

本科卒業後に進学する場合、主な道は二つあります。

都城高専の物質工学専攻へ進む

令和5年度は7人、令和6年度は6人、令和7年度は8人が、物質工学科本科から都城高専専攻科へ進んでいます。3年度で合計21人です。

同じ学校で研究を続けられるため、これまで使ってきた実験設備、研究テーマ、指導教員とのつながりを生かしやすい進路です。

大学へ編入する

本科卒業後、大学の主に3年次へ編入します。

令和5年度の進学先には、長岡技術科学大学、鹿児島大学、熊本大学、東京農工大学、東京工業大学があります。令和6年度には、豊橋技術科学大学、南九州大学、長岡技術科学大学、群馬大学への進学実績が掲載されています。

大学では、応用化学、材料工学、生命科学、化学工学、農学など、より専門を絞って学ぶことができます。

専攻科から大学院へ進む

物質工学専攻を修了し、学士(工学)を取得した後は、大学院でさらに研究を続けられます。

専攻科では、研究テーマを深めながら、自分がどの分野を大学院で研究したいかを考えられます。別の大学の大学院へ進み、研究環境や専門分野を変えることもできます。

都城高専の物質工学科へ入学したからといって、本科卒業後に必ず就職しなければならないわけではありません。
  1. 本科卒業後すぐに企業へ就職する
  2. 都城高専の物質工学専攻でさらに2年間学ぶ
  3. 大学へ編入する
  4. 専攻科や大学から大学院へ進む

在学中の授業、実験、卒業研究を通して、自分が早く現場で働きたいのか、特定の分野をさらに研究したいのかを考えられます。

11.物質工学科が向いている中学生

物質工学科に向いているのは、中学校の時点ですべての化学式を覚えている人や、特別な実験経験がある人だけではありません。

たとえば、次のような人には向いている可能性があります。

  • 物質を混ぜたり加熱したりしたとき、色や状態が変わる理由に興味がある
  • 薬、食品、化粧品、洗剤、プラスチックなどが何からできているか知りたい
  • 新しい素材、電池、半導体、環境技術に興味がある
  • 微生物、発酵、酵素、細胞、遺伝子に興味がある
  • 実験をして、予想と結果が違った理由を考えるのが好き
  • 細かい量を正確に測り、手順を守って作業できる
  • 表やグラフから、数値の変化を読み取ることが好き
  • 一度でうまくいかなくても、条件を変えて試すことができる
  • 医薬品、食品、化学、バイオ、環境に関係する仕事を考えている
  • 化学と生物のどちらにも関心があり、入学後に専門を考えたい

入学前に知っておきたいこと

物質工学科は、毎回派手な色の変化が起きる楽しい実験だけをする学科ではありません。

実験前には目的、原理、薬品の性質、危険性、手順を確認します。実験後には計算を行い、結果をグラフや表にまとめ、誤差や失敗の原因を考え、レポートを書きます。正確な測定と地道な記録が多くの時間を占めます。

また、化学だけでなく、数学、物理、生物、情報処理、英語も使います。化学工学では熱や流れを数式で考え、分析ではデータを処理し、研究では英語の資料を読むこともあります。

薬品、火、圧力、微生物、分析装置などを扱うため、自己流で作業せず、安全規則と手順を守る姿勢も重要です。

現在の知識量だけでなく、「身の回りの製品は何からできているのか」「どうすれば同じ品質で安全に作れるのか」を自分で確かめたいかが大切です。

12.まとめ - 物質工学科は、医薬品・材料・食品・環境を「科学と生産」で支える技術者への入口

都城高専の物質工学科は、化学式を覚えたり、試験管で実験したりするだけの学科ではありません。

分析化学、有機化学、無機化学、物理化学、生物化学、化学工学、電気化学などを学び、4年生から物質工学コースと生物工学コースに分かれます。毎学年、週4時間以上の実験に取り組み、5年生では卒業研究を行います。

進路の全体数が確定している令和5・6年度では、本科卒業生86人のうち58人、約67.4%が就職し、27人、約31.4%が専攻科や大学などへ進学しています。令和5・6年度の就職決定率はいずれも100%です。

令和5~7年度に本科から就職した79人を、この記事で仕事内容に近い形へ整理すると、次のようになりました。

化学・素材・日用品・金属:17人(約21.5%)

医薬品・医療・バイオ:15人(約19.0%)

半導体・電子・製造装置:13人(約16.5%)

石油・エネルギー・ガス・石油化学:12人(約15.2%)

食品・飲料・たばこ:12人(約15.2%)

環境・分析・設備・その他:10人(約12.7%)

化学・素材と医薬品・バイオを合わせると32人、約40.5%です。
石油・エネルギー・ガス・石油化学まで含めると44人、約55.7%となり、化学を直接使う産業が中心です。一方で、食品、半導体、資源リサイクルなどにも進路が広がっています。

学校で学ぶ分析化学は、医薬品の純度、食品の成分、工場排水、貴金属の量などを調べる仕事につながります。有機・無機・材料化学は、薬、樹脂、電子材料、触媒などを作り、性能を評価する仕事につながります。

化学工学は、研究室で作れた物質を、工場で安全・安定・効率的に量産するために使われます。生物工学は、微生物、酵素、細胞、遺伝子などを、食品、医薬品、環境技術へ利用します。

本科卒業後すぐに企業で働くことも、物質工学専攻でさらに2年間学ぶことも、大学へ編入することもできます。専攻科や大学から大学院へ進み、研究を続ける道もあります。

都城高専の物質工学科は、薬の品質を守る人、新しい材料を作る人、化学工場を安全に動かす人、食品の味と衛生を支える人、半導体製造を支える人、廃棄物を資源へ戻す人など、社会のものづくりを「物質の科学」で支える技術者への入口です。

進学先を考えるときには、「新しい物質を作りたいのか」「成分を正確に分析したいのか」「工場で安定した生産を支えたいのか」「微生物や細胞を利用したいのか」「環境や資源循環に関わりたいのか」「さらに研究を続けたいのか」という視点から、自分の興味を考えてみることが大切です。

13.使用資料

この記事は、時点で公開されている都城高専の公式資料と、就職先企業・同業種企業の公式サイト、公式採用情報、公式YouTubeを使用して作成しています。

主な使用資料

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