大学受験において、一般入試に先立ち推薦入試を志す学生は多いと思いますが、一般入試以上に推薦入試は1年生の頃から戦略的に動くべきと思います。
推薦入試は、他の学生であれば一般入試の対策に時間を使う3年生夏終わりにその準備に忙殺される事から失敗した時のデメリットが想像以上に大きいです。
そこで、推薦入試の基本的な考え方と、推薦入試を志すのであれば是非ともやってほしいことと、心構えをここに書き記したいと思います。なお、当然ながら基本的には学校の評定が一番重要になるので、高校入学時から成績が良好で、英検などの外部資格取得に熱心であることは前提です。そこからどう差をつけるかを中心にお話しします。
※ 高校入試に関しては難易度は下がりますが、考え方は基本同じです
一般入試の1部あるいは全てを免除されたうえで学生を評価する以上、推薦入試は学力以外の評価指標が重要視されます。つまり、学力以外に胸を張って人より優れていると思う部分、あるいは他の学生よりその大学に入学したいという意志を、説得力を持って説明できなければなりません。
多くの学生が苦労するのがこの「説得力」の部分なのですが、ここで重要になるキーワードが「行動」と「継続」です。
例を上げます。看護系大学の推薦入試を受けようとする場合に、下記のような準備をしていたとします。
・ 1年生の時から老人ホームや学童など人とコミュニケーションをとるボランティアを「継続」的に行う。
・1年生の時から看護系大学の主催するイベントやオープンキャンパスにも積極的に参加する。可能な限り複数大学参加するのが好ましいです。
この上で、下記のような志望動機を書くとどうでしょうか？
高校入学の早い段階から看護師を将来の職業として考えて来ました。その理由は、高校1年生の時から続けている老人ホームや学童のボランティアを通して、私は自分を必要とする人達に寄り添ってその手助けをすることに喜びを感じることに気付いたからです。私は看護師への興味から九州内 5つの看護大学のイベントやオープンキャンパスに参加させて頂きました。その中でも、貴学で意欲的に学ぶ学生や教授陣の人柄に魅力を感じ、このような環境で勉学に励み人々に貢献できる看護師を目指したい。このように考え貴学を志望しました。
高校入学当初から自分の進路を真剣に考えそのための「行動」をし、それを「継続」できる学生は非常に少ないです。大学側の視点に立った時に、推薦入試で入学後してもらう以上、入学後のミスマッチで退学などは絶対に避けたいと考えます。そのため、学生は将来の目標を明確にしてそのための行動を続けられると同時に、希望大学への志望度が絶対的に高いのであるという事をアピールすべきだと思います。志望理由書や自己推薦書は書く分量が膨大で、学校の勉強や部活にほとんどの時間を使っていた場合、書き切るのが困難あるいは極めて完成度の低いものを提出せざるを得なくなってしまいます。
志望動機は必ずあらゆる書類で深掘りされ、面接でも問われ続けます。それな耐えうる内容を長い時間をかけて用意すべきなのです。
その他例えば、情報系大学の推薦入試を目指すのであれば、Googleの提供する高成長分野向けのオンライン職業訓練プログラムを先取りして受講するのもいいでしょう。大体6ヶ月以上のプログラムですが、時間と根気さえあれば必ず誰でも修了できます。商学部の推薦入試であれば簿記、法学部であれば宅建や行政書士を取るでもいいのです（受験資格もありません、不合格でも成績開示で努力量は示せるでしょう）。工学部であれば電子工作にチャレンジするでもいいと思います、Raspberry Piのような教育向けシングルボードコンピュータは安価で入手可能で、東京工業大学が中高生向けにRaspberry Piオンライン講座も開講しているのも目にしたことがあります。
もちろん、上記のような努力や活動を積み重ねることは進学校の生徒からすると日々の学習が疎かになるという点でリスクのあることです。しかし、他の学生よりも何らかの点で突出して頑張った部分がないにも関わらず、推薦入試に突入することの方が私にはリスクであるように思えます。
もっと簡単なところで言うと、東大を初めとして各大学は、様々な分野で高校生が参加可能なプログラムを提供していることも多く、意欲的な学生にはいくらでもチャンスが広がっていると感じます。自分の頭で「大学が求める人材とは何か」を考えそれに合わせた努力を継続できるような学生が、推薦入試を利用すべきではないでしょうか。
3年生から推薦制度の存在を知り、志望動機や自己推薦書のネタ探しを行おうとしても、「継続」が伴っていない単発の行動は、内容が薄く人の心を動かすことはできません。
・オープンキャンパスやパンフレット、Webサイトで○○が魅力に感じた
・○○のイベントに参加して、将来への職業として○○に興味を持った
などは多くの学生が書きがちですが、「誰でも、すぐに」用意できる内容でもあり、大学側にその学生を取る必然性がないのです。
加えて、仮に行動や継続が伴っていたとしても、その行動が将来の目標と地続きでなければいけません。部活を3年間がんばったなどは、継続が伴ってますが、目標と地続きかという意味に加え、「ほとんど全ての学生が書いてくる」という意味で優位性はありません（突出した成果を残した場合は別ですが）。例えば看護大学の推薦入試で、「貴学に入学するためにサッカーを頑張りました」とアピールしても説得力は薄いでしょう
特に単発のイベント(ボランティア 1回など)に参加して、そこでの実績などを書くことも多くの学生がやりがちですが、推薦入試ではあらゆる角度から志望動機を問われます。継続の伴わない行動は内容が薄くそれに耐えうる内容にはならないことがほとんどです。
したがって、推薦入試を志すのであれば早めに自分が何になりたいかの目標設定と志望校選択を行い、それに向けた行動を継続させなければなりません。人の心を動かすのは、場当たり的な行動ではなく、一貫性と継続性を伴った行動なのです。
推薦入試はその準備が主に3年生夏以降に集中することから、当然のことながら一般入試の対策に支障を来たします。
経験として特に問題となるのが、やはり意識や甘えの問題で「推薦入試で合格すれば、○○の科目は不要」と言うような状況で、一般試験組と同様の危機感やモチベーションで勉強することは難しいように思えてなりません。
推薦入試は合格点が○点で、現在○点取れるというような客観的な評価指標に落とし込むことが困難であるため、一般入試と異なり自分の立ち位置を見誤ることが多いように思えます。その意味で基本的には一般入試を主軸に考えて学生生活を送ることが無難な選択であるでしょう。
私が特に強調したいのは、推薦合格を目指すのであればそれ相応の積み重ねを早いうちから始めて欲しいと言うことです。一般入試にもそれ相応の合格戦略があるように、推薦入試にもそれなりの合格戦略があります。
推薦入試それ自体は、上手く利用するとチャンスが増える有効な手段で、準備を積み重ねた上で目指すのであれば大いに賛成です。ただし、その対策を3年生から行うようであれば見送って一般入試に全力を尽くした方が有効に思えてなりません。シンプルに失敗した時のリスクが大きいからです。
加えて、推薦入試に学科試験が課されている場合、一般入試とはかなり形式の異なる内容を問われることが多いです。3年生の夏以降にこの対策に追われるのは、仮に推薦合格が叶わなかった場合、相当な遅れを覚悟するべきです。
したがって、繰り返しになりますが高校入学後早い段階で自分が推薦・一般どちらの受験形式を目指すべきなのかを決めて、推薦入試を選択するのであれば、将来的に大学側を説得するだけの材料を集める努力を続けなければなりません。
学生生活をただ漫然と送っているか戦略的に動いているかで、進学する大学のレベルは大きく異なります。また一生懸命の方向性がズレていても大きな成果には繋がりません。学生たちの頑張りが、将来の豊かさに繋がることを心から願います。
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